Assert Webの更新情報(2022-08-15)

【最近の投稿一覧】
8月15日 【投稿】対ロ経済制裁の惨めな結末と「ペトロ・ルーブル」の出現
8月13日 【投稿】米国の内乱への恐れとペロシ米下院議長の訪台―日本はどう振舞うべきか
8月10日 【書評】「帰れない村──福島県浪江町『DASH村』の10年」
8月8日 アドテック DDR4 2666MHzPC4-2666 288Pin UDIMM 32GB ADS2666D-32G 1枚 ds-2485981
8月6日 【翻訳】「アメリカは、修復を飛び越えて、壊されるかもしれない。」
8月6日 【翻訳】「自由、恐怖 :アメリカの銃文化」
8月3日 【投稿】検察審査会、原発マネー不正環流した反社会的企業:関電に「起訴相当」
7月31日 【投稿】「バイデン不況へ、ようこそ」--経済危機論(88)
7月28日 【投稿】安倍元首相「暗殺」と「国葬」に米ネオコンの影
7月20日 【翻訳】プーチン大統領の健康状態をめぐる不確実性
7月20日 【書評】『東電原発事故10年で明らかになったこと』
7月19日 【投稿】米vs.中東:ドル支配の危機を露呈--経済危機論(87)
7月14日 【投稿】参院選―高揚感なき大勝の自民党と、リアリズムが欠如する野党の敗北―
7月11日 【投稿】参院選:自民大勝と野党共闘--統一戦線論(77)
7月9日 【投稿】安倍晋三元首相「暗殺」の背景
7月3日 【投稿】ガス不足で今冬には日本は凍え死ぬ―「サハリン2」からの日本企業撤退要求と日本政府の対応―
6月30日 【投稿】電力危機を原発再稼働の理由にするも、福島第一「廃炉」の腰は定まらず
6月29日 【投稿】ドル支配瓦解への胎動--経済危機論(86)
6月18日 【投稿】金融危機が迫る中、従属国の日本には「ドル売り」=「円安」修正は不可能
6月13日 【投稿】インフレ高進とバイデン政権--経済危機論(85)
6月13日 【投稿】NATOの「自分探しの旅」の終わり

【archive 情報】

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[HISTORY]-「大阪の戦後学生運動史」の中に、以下の文書を追加しました。(11/9)
【資料】大阪市立大学 学生運動史 (1960年以降)

[HISTORY]-「構造改革派について」の中に、以下の文書を追加しました。(11/3)
【試論】日本のこえと民学同
【試論】日本共産党 市大細胞について

「MG-archive」に、「新時代(誌)リスト」を追加しました。(9/27)

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【投稿】対ロ経済制裁の惨めな結末と「ペトロ・ルーブル」の出現

【投稿】対ロ経済制裁の惨めな結末と「ペトロ・ルーブル」の出現

                           福井 杉本達也

1 ロシアへの経済制裁の目的とその無残な結果

ロシアに貿易と金融制裁を課すことは、ロシアの消費者や企業が、慣れ親しんだ米国・NATO輸入品を購入するのを阻止すると予想されていた。ロシアの外貨準備を没収することは、バイデン大統領が約束したように、ルーブルを「瓦礫に変える」ルーブルをクラッシュさせるはずだった。ロシア石油とガスをヨーロッパに輸入することに対する経済制裁を課すことは、ロシアから輸出収入を奪い、ルーブルを崩壊させ、ロシア国民の輸入価格(ひいては生活費)を上昇させるはずだった(マイケル・ハドソン「悲劇的なドラマとしてのアメリカ外交」2022.7.29)。しかし、それは最終的に失敗に終わった。8月10日のFINANCIALTIMES(日経)は、欧州各国はロシア産原油の禁輸措置を緩和した。原油価格の上昇と世界的なエネルギ供給の逼迫を背景に、ロシアを世界最大級の船舶保険市場である英ロイズ保険組合から締め出す計画を延期し、一部の原油輸送を可能にした。」と報じた。

2 ドルの金兌換の停止と「ペトロダラー・システム」

ドイツ降伏の10カ月前の1944年7月、連合国側はブレトンウッズに集まり、連合国通貨国際会議(ブレトンウッズ会議)が開催された。会議での合意の内容は2つ、①参加各国の通貨はアメリカドルと固定相場でリンクすること、②アメリカはドルの価値を担保するためドルの金兌換を求められた場合、1オンス(28.35g)35ドルで引き換えることとした。

しかし、米国はベトナム侵略戦争などに苦しみ、財政赤字とインフレーションの為、金兌換の約束を守れなくなった。そこで、当時のニクソン大統領は1971年8月にドルの金への兌換が終わらせた。

金とのリンクが外れた政府は理論上はいくらでも貨幣を印刷することは可能である。しかし、金という錨がなくなった船は、インフレーションによってその価値はどんどん下落し続ける。これでは国際通貨としての信用は得られない。そこで米国がとった方法は、ドルと石油とのリンクである。いわゆる「ペトロダラー・システム」である。ニクソン政権下のキッシンジャー国務長官はサウジを訪問し、1974年、①サウジの石油販売を全てドル建てにすること、②石油輸出による貿易黒字で米国債を購入すること、その代わり、③米国はサウジを防衛するという協定を結んだ。1975年、他のOPEC諸国も石油取引をドル建てで行うことを決めた。

金とのリンクよりも、石油とのリンクは米国にとって格段に有利であった。金との兌換の約束はなくなり、無制限にドルを印刷することが可能となった。サウジなど石油産出国による米国債購入によって、ドルは米国に還流し、米国は財政赤字を気にすることもなくなった。

米国は「ドル借用金を、自由意志で、無制限に、世界経済に作り出し、使うことができるということだ。他の国々がしなければならないように、貿易黒字を計上して国際的な支出力を獲得する必要はない。米国財務省は、外国の軍事支出や外国の資源や企業の購入に資金を供給するために、単にドルを電子的に印刷することができる。そして「例外的な国」であるため、これらの負債を支払う必要はありません。それは支払われるには大きすぎると認識されています。外国ドルの保有は、米国に対する米国の自由なクレジットであり、私たちの財布の中の紙のドルが(流通から引退することによって)完済されることが期待される以上に返済を必要としません。」(マイケル・ハドソン:同上)。

3 米国自身がドルの国際通貨体制を終わらせる

「トランプ政権は2018年11月、ロンドンで保有されているベネズエラの公式金株約20億ドルを没収」した。過去においては、「1979年11月14日、カーター政権はシャーが打倒された後、ニューヨークのイランの銀行預金を麻痺させた。この法律は、イランが予定していた対外債務返済を妨害し、債務不履行に追い込んだ。」(マイケル・ハドソン:同上)。2011年2月に米国とNATOはリビアを攻撃し、カダフィを惨殺した。カダフィが石油取引にドルでもユーロでもなく、準備通貨300億ドルの金にリンクされた「ゴールド・ディナール」提唱したからである。その後、300億ドルは行方不明であり、米・NATOに盗まれたと思われる。また、2022年2月11日、バイデン米大統領は、9.11の攻撃の犠牲者への賠償に使うと称し、米国で保有する70億ドルの凍結されたアフガン資金の半分を使用する行政命令を出した。アフガンは、米国の70億ドルを含む海外の資産で約90億ドルを持っている。残りは主にドイツ、アラブ首長国連邦、スイスである。タリバンはこの押収を「窃盗」と表現した。現在、アフガンは外貨不足のため食料輸入もままならず極貧の状態で苦しんでいる。そのなけなしの資産を米国自らが仕組んだ9.11詐欺のために分捕るというでである。タリバンは米国が「人間性と道徳性が最低レベルであることを示している」と批判した(福井:2022.2.13)。

そして今回、ロシアのウクライナ侵攻に対抗して、「バイデン政権とそのNATO同盟諸国が、2022年3月にロシアの外貨準備高と通貨保有の約3000億ドルのはるかに大きな資産を掌握した」「米国政府の利益にかなわない政策に従う国は、米国当局が米国の銀行や証券の外貨準備の保有を没収する」「通貨準備金が大きい国は、FRB(および制裁に参加している他の西側中央銀行)との残高がまだ安全であるかどうかという疑問が生じる」(マイケル・ハドソン:同上)。最大の外貨準備を持つ国は中国である。サウジや他の湾岸首長国連邦も相当なドルを保有している。

4 ロシア資産の「没収」は資本主義を最終的に崩壊させる

6月1日のFINANCIALTIMES紙上(日経)で、ジリアン・テットは「ロシア資産、没収できるか」と書いている。5月下旬にゼレンスキー・ウクライナ大統領がダボス会議で、「ロシア中央銀行の資産を没収し使えるようにして欲しい」と演説したからである。「一貫性のある透明な枠組みがないままロシアの資産の没収・分配が実行されれば、西側諸国の政府は何年もの歳月と多額の費用がかかる裁判に見舞われるか、あるいは自国の政治経済を支えている信頼の基盤を失うことになる。」と書く。さすがのイエレン米財務長官も「中銀資産の没収は「米国では合法ではない」と指摘した(日経:2022.5.20)。もし、「資本主義」の原理に反して、「没収」すれば、サウジや中国を始め、世界の非西側諸国の米国への投資は直ちに全て引き上げられるであろう。それは米国の「破産」を意味する。

5 「ペトロ・ルーブル」の出現

ロシアは、GDP 比の国債残が17.7%しかない。133%の米国、230%の日本の財政状況と比較して超健全である。エネルギー・資源・穀物の輸出から、貿易でも黒字が続き、2020 年の黒字は225 億ドル(2.7 兆円)であった。ロシアは、海外に依存せず、自立できる経済である。米国は資源では自立できるが、消費財の商品輸入では中国への依存が大きい。アップルは、100%中華圏で委託製造、輸入・販売している。西側は、必須なエネルギーと資源・穀物を輸出するロシア経済の現実を見ていない。、資源(コモディティ)リンクのルーブルに向かっている。そして、金兌換ではないが、ルーブルには金という準備金の裏付けがある。

「『ガス・ルーブル』(エネルギー資源のルーブル決済)は、今のところまだ『オイル・ダラー』と同等ではないが、前例のない規模での対ロシア制裁の実施後に『ガス・ルーブル』という手法が現れたのは、国際通貨制度がターニングポイントに近づいたことを意味しているSputnik 2022.4.24)。中国社会科学院の徐坡岭は『環球時報』において、「当初、ルーブルの為替レートはドルとユーロに対して下落したが、その後、急速に高騰し始め、過去6カ月での最高値に近づいたと指摘した。また、徐坡岭氏は、このことは、ロシア経済をただちに破壊しようとする米国と欧州の目標が達成不可能であることを示唆していると語った。また、同氏は、ロシア政府によるタイムリーで効果的な対応を特別に注視しており、その例として、ロシアのガスをルーブル建てでのみ取引するよう、ウラジーミル・プーチン大統領がガスプロム社に指示したことが上げられると語った。また、同氏は、現在、「ガス・ルーブル」は「オイル・ダラー」ほど強力ではなく、普及もしていないが、その存在自体がすでに既存の国際通貨制度に風穴をあけていると強調する。」(Sputnik 同上)と語っている。また、徐坡岭は、「米国と欧州連合(EU)は、ロシアの外貨準備を凍結し、独立国家の信用通貨と国際決済システムを政治的手段と武器に変え、信頼できる準備通貨としてのドルとユーロへの信頼を損ねたと指摘した。同氏は記者に対し、『より競争力のある国際通貨が国際準備通貨制度に加わることで、より収益性が高く便利な決済システムが前面に出てくることになる。短期的には、これまでのようなドルの覇権を揺るがすのは難しいが、変化はすでに始まっている』と語った(同上)。

6 フィクションとしての「GDP」信仰

ロシアのGDPは韓国を下回る世界第11位の1.3兆ドル、米国の23.0兆ドルと比較すると6%以下である。一方購買力平価ベースでは世界6位で米国の1/5となる。しかし、このGDPという指標は経済学における一つの決まりに過ぎない。統計学の竹内啓はGNP(GNP =GDPは国内で一定期間内に生産されたモノやサービスの付加価値の合計額。 “国内”のため、日本企業が海外支店等で生産したモノやサービスの付加価値は含まない。一方GNPは“国民”のため、国内に限らず、日本企業の海外支店等の所得も含んでいる。)は「極端なことを言えばうそ、フィクションなんです。フィクションですけれども、ちゃんと権威のあるところが決まった方法で決まったフィクションをつくっていくと、それをみんながいろいろ指標として使うようになる。みんなが使えば、実質的意味をもつようになる」(森毅+竹内啓:『数学の世界』1973・3中公文庫 2022.4.25)と書いている。GDPという指標が役に立つというのは、国民経済の特徴と大きさを大雑把に掴むという「構造的理解を含めて実際に役に立つということであり、一つはことばとして役に立つ…数学で表現すると意思疎通がうまくいく…数式的な表示をしないと、ことばでは追っつかない」(同上)ということであり、必ずしも実体経済を正確につかんでいるというものではない。産業資本主義の段階では実体経済との差は大きくずれてはいなかったかもしれないが、金融資本が実物資産の何倍にも肥大化した現在では、必ずしも実体経済を反映した数字とはならない。米国や西側のGDPは金融取引などで何倍にも肥大化され、逆に資源国などは何分の一かに過小評価されていると考えられる。通貨も同様であり、ドルは実質価値の何倍にも肥大化され、ロシアなどの資源国通貨は何分の一かに減価されている。
西側はロシアへの経済制裁によって、GDPで世界11位で、石油と天然ガスしかないロシア経済などは取るに足らず、簡単に崩壊させることができると考えたのであろうが、これは大きな誤算であった。自ら作り上げたフィクションに自らが騙されたのである。世界の資源の過半を独占する自らより大きな経済体に「制裁」を課すことで、逆に自らを「経済制裁」することになっている。その評価基準がドルであり、「石油にリンクしない」ドルの没落ととともに、自らに課した「経済制裁」の重圧により、西側は最終的に「自己崩壊」せざるを得なくなる。

カテゴリー: ウクライナ侵攻, 杉本執筆, 経済 | コメントする

【投稿】米国の内乱への恐れとペロシ米下院議長の訪台―日本はどう振舞うべきか

【投稿】米国の内乱への恐れとペロシ米下院議長の訪台―日本はどう振舞うべきか

                                福井 杉本達也

1 FBIによるトランプ邸の捜索と米国の分裂

FINANCIALTIMES紙上でコラムニストのラナ・フォルーハーは「社会や政府の不安定さ、政治を巡って暴力が発生するリスク、さらには民主主義を脅かすリスクなどだが、米国の場合、これらの数値の推移と蜜動ぷりからすると、先進国というより途上国のようにみえる」「武力闘争はどこか外国で起きるものとされてきた。だが、もはやそうではない。銃を持っか否かにかかわらず、米国は自らとの戦争を始めてしまったのだ。」と書いている(日経:2022.7.22)

FBIは8月8日、フロリダ州に所有するトランプ氏邸宅を捜索した。「大統領在任中に扱った機密を合む文書をホワイトハウスから持ち出した疑い」からである。「トランプ前大統領の邸宅を家宅捜索したことに野党・共和党が反発している。11月に迫る中間選挙を前にした『政治利用』(下院共和党トップのマッカーシー院内総務)などと批判した」(日経:2022.8.11)。「大統種選を控えている時に次期大統領になる可能性がある人物を被告人席に座らせるなど『前代未聞』だ。内乱が起きる危険もある。…今も熱狂的支持者が数百万人」いる。「トランプ氏が起訴されれば、その罪状は極めて深刻なものになる。19世紀の米国人哲学者ラルフ・ウォルドー・ェマソンが言ったように『王を討っときは殺さなければならない』」(エドワード・ルース FINANCIALTIMES2022,8,5)。「トランプが2024年に再び勝利するにせよ、あるいは選挙が行われる前でさえも、彼は起訴され有罪判決を受け、大統領の座に就くことを禁じられ、おそらく数年間刑務所で過ごさなければならなくなる」。「ソーシャルメディア上の一部の人々や一部のジャーナリストは、米国が今、内戦の衝突危機にいる可能性があると正確に言っている。この国はすでに政治的に分裂している」(Bradley Blankenship「FBIのトランプ邸襲撃は、彼が2024年に立候補できないことを意味する可能性があり、彼の過激派信者は立ち上がるだろう」(RT:2022.8.7)。

 

2 ペロシ米下院議長の台湾訪問と中国の台湾封鎖の可能性

こうした、米国内の大混乱の中、ペロシ米下院議長が8月2日、台湾を訪問した。日経ワシントン支局長の大越匡洋は「米政権が与党内の一政治家の『信念』に基づく行動を持て余していることだ。パイデン大統領はペロシ氏の訪台計画について『米軍は今は良くないと考えている』と記者団に漏らした」「パイデン政権は『ペ口シ訪台後』のシナリオを描けていない。」と書いた(日経:2022.8.5)。米国の外交は危険な大混乱状態にあるといえる。米中の歴史的な和解は1971年のキッシンジャーが画策した「ニクソン・ショック」に始まる。米国はソ連の封じ込めと中国市場を得るために、中国はソ連への対抗と、経済発展のために、歴史的な妥協を行った。その後45年間、台湾問題をめぐっては、米中関係に影響を与えたが、「一つの中国」という一連の妥協を相互で理解していた。中国にとって、1895年の日清戦争で“戦利品”として日本に奪われ、その後、1949年に蒋介石が本土で敗退して米軍の占領する台湾に逃げ込んだが、失われた領土を取り返すことは、100年以上にわたる中国の悲願である。しかし、米占領下の台湾が独立を宣言しなければ、中国は忍耐強く対応することを明言していた。

しかし、こうした米中関係の相対的安定性が終わりを告げた。「非常に危険な状況である。両国の関係はすべての予測可能性を失った。以前は、米中関係は、互いの立場に対する確立された深い相互理解と尊敬に基づいていたが、今はほとんどなく、時には全くないように見えることもある。」(Martin Jacques「ナンシー・ペロシ、米国を無秩序と不安の時代へ導く」『耕助のブログ』2022.8.11より)。米軍は台湾近海に空母2隻を派遣し、ペロシの飛行機はフィリピンの東海上、マリアナ沖に迂回させるなど、衝突のシナリオを想定していた。しかし中国政府は冷静であった。台湾の中国への再統合は緊急の問題ではない。台湾の独立派政府を服従させるための長期的な対策を練っていた。台湾をめぐる軍事衝突の危険性は、1970年代以降、かつてないほど高まっている。中国は今や米国と対等であり、はるかに手強い軍事的敵対者であるため、そのような紛争が起きれば、以前よりもはるかに深刻な事態となる。

台湾の定める接続水域に中国軍の艦船が侵入した。台湾軍は「排除」に動けず、安全保障の大穴を開けられてしまった。空と海の封鎖は台湾に大きな打撃を与える。電力の約40%は天然ガスで賄われており、そのすべてが輸入されなければならない。もう一つの大きな部分は、輸入している石炭で賄われている。石油製品についても同じことが言える。ペロシが訪台する前は、島のガス貯蔵量はわずか11日間であった。石炭と石油は貯蔵が容易だが、封鎖が解除される前に枯渇する。2018年の台湾の食料自給率はわずか35%である。台湾の全面封鎖では、数週間か数ヶ月以内に中国にひざまずく可能性が高い(参照:Moon of Alabama 「China’s Reaction To Pelosi’s Visit Reveals Its Taiwan Conflict Plans」2022.8.6)。

『前USA海兵隊情報将校・国連兵器査察官スコット・リッターのアップデート/台湾戦争勃発の瞬間が近づいている』において、スコットは「毎年、ペンタゴンは「戦争ゲーム」を通して、台湾をめぐる米中戦争のシミレーションをやっています。結果は毎年同じで、それはアメリカが負けるという結果です。あらゆる条件でシミュレーションしても出てくる結果はいつも同じです。つまりアメリカは負けるのです。」「現在、台湾にあるアメリカ軍兵備はほとんどゼロに等しいので、アメリカは一から上陸を開始する必要があります。非常に重量のある大型の兵器も必要ですが、それらを空輸することはできませんから、全て船で運ばなければなりません。」「中国は台湾に向かうすべてのアメリカ艦艇を海に沈めるでしょう」「そして、私たち(軍関係者)はみんなそのことを知っているのです。任務を帯びた航空母艦の提督でその事を知らないものはいないからです。中国に近づけば近づくほど生きて帰れる可能性は少なくなるということをみんな知っています。」(2022.8.11)と答えている。

 

3 ペロシ訪台への韓国の対応と日本:中国は岸田政権を見限ったか?

尹錫悦韓国大統領は夏休みのためにペロシとの会談の予定はないと、ペロシを鼻であしらった。一応、電話会談を行ったものの台湾には一切触れなかった。韓国は「大人」の外交を演じた

一方の日本は中国軍の4日の軍事演習中に中国軍が撃った5発のミサイルが日本のいわゆる「排他的経済水域」(EEZ)に落下したと主張した。しかし、関連海域では中日間で境界線についての合意はなく、いわゆる「日本の排他的経済水域」なるものの主張はもともと存在しない。日本側は中国の軍事演習の報道に熱を入れたが、アジア・アフリカのその他の国々は何らかの形で中国の「一つの中国」への支持を打ち出していた。

バイデン政権は先進7カ国(G7)と中国の軍事演習を非難する共同声明を発した。日本もメンバーとして名を連ねた。そのため、8月4日、ASEAN(東南アジア諸国連合)10カ国と、日本やアメリカ、中国などが参加する東アジアサミット外相会議で予定されていた林芳正と王毅の外相会談が突然キャンセルされた。台湾問題は中国にとってのレッドラインである。日本は、中国の警告を無視して台湾に言及し続けた。結果、中国は「自分の外交を持たない国」として日本を見切った(参照:富坂聰:『ペロシ訪台があぶりだした日本外交とアジア各国との埋めがたい距離』2022.8.11)。鳩山由紀夫元首相は3日、自身のツイッターを更新。「ペロシ米下院議長が台湾を訪問した。ウクライナのNATO加盟を巡って、米国はロシアの不安を無視して突っ走り、戦争を招く大きな原因となった」とし、その上で「米国はウクライナ戦争から教訓を学ぶどころか、台湾でも同じ間違いを繰り返そうとしている。愚かだ」とし、「その米国に唯々諾々とついて行けば、日本もまた愚かだ」とツイートした(東スポ:2022.8.3)。米国の内政・外交が大混乱する中、いつまでも金魚のフンのような属国外交を続けるようではアジアにおいては誰も相手をしなくなる。

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【書評】「帰れない村──福島県浪江町『DASH村』の10年」

【書評】 『帰れない村──福島県浪江町『DASH村』の10年」
            三浦英之著、2022年1月刊、集英社文庫。620円+税)

 「福島県浪江町にある『旧津島村』(現・津島地区)。/その旧村名は知らなくても、かつて日本テレビ系列のテレビ番組でアイドルグループ『TOKIO』が住み込んで農業体験をした『DASH村』と言われれば、あるいは耳にしたことがあるかもしれない」。人口約1400人が暮す山間の小さな村。そこを2011年3月、東京電力福島第一原発の事故が襲った。「村」は原発から北西に20~30キロ、まさにその方向に風に乗って大量の放射性物質が運ばれ、住民は避難を余儀なくされたばかりか、「事故から11年が経った今でさえ、誰一人故郷に戻れない」。本書は、この「帰れない村」に、「ペンとカメラと線量計を持って」3年半(2017年秋~2021年春)通い続けた記録である。本書の構成は、見開き2ページの記事とそれに続く4ページの写真とからなっている。元住民それぞれの思いとそれを裏打ちする写真は、原発事故の深刻さとそれをそのまま現在まで引き摺っている苦悩に満ちている。
 「DASH村」についてはひとまず置いておこう。その「地主」は「まさか、あんなに有名になるとは思わなかった」と語る。「復興のシンボルとして使ってくれるなら、あの土地を無償提供したいと思っているんだ」とも。
 しかし現地の精神科医は語る。
 「2019年に旧津島村の約500人を調査したところ、48.4パーセントの人がPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状を訴えました。非常に高い値です」。この医師はかつて長く沖縄戦を原因とするPTSDの診療を続けてきて、2013年に被災地の力になりたいと相馬市に赴いた。両者を比較して明確な差異があるという。「福島の特徴は『過去の体験を語れない』ということです。『放射能が怖い』と言うと変人扱いされ、避難先で被災者であることを告げると、周囲から『あの人は補償金をもらっている』と言われてしまう」。津島は全域が帰宅困難区域で、住民が散らばって避難生活を送っている、震災当時の体験を周囲と話し合うことができず、風化しないのでトラウマがより脳や心に深く刻まれる、と指摘する。「ここに暮している限り、風の強い日には除染されていない地域から飛んでくる放射性物質を吸い込むのではないか、飲み水や魚は安全かなど、本来なら心配しなくてもいいことを気にかけなければならない。神経の過覚醒が継続していて、相撲で言えば、『はっけよい』『見合って、見合って』の状態がずっと続いているような状態で、心が疲れないはずなどないのです」。
 ところが政府は2020年、「除染をしなくても避難指示を解除できるようにする方針」を進めることを表明した。それ以前に政府は、浪江町内の帰宅困難区域約7平方キロ(帰宅困難区域のわずか4%)を「特定復興再生拠点区域」として除染し、2023年にも避難指示解除を目指す計画を示したが、ここにきて方針の転換である。町議会にこの方針に反対の意見書を提出(全会一致で可決)した町議は憤る。「『汚したものは、きれいにして返す』。それが大前提じゃないか。汚染地域をしっかりと除染し、住民に『帰れる』という選択肢を示す。その上で、実際の帰還については、それぞれの判断に任せる。除染がなされなければ、住民は帰れるかどうかの判断すらできないのです」。
 また本書に登場する人びとのうちの幾人かは、旧津島村・赤宇木集落の住民であった。ここは戦後、旧満州(現・中国東北部)からの多くの帰還者を受け入れた地域である。苦難の末帰国し、赤宇木集落の開拓団で「山林を切り開き、ササで屋根をふいただけの小屋で寝泊まりしながら炭やジャガイモなどを作った」。その人びとが、「原発事故。敗戦から半世紀を経て、(略)再び家を追われた」。
 本書は最後に、震災の年の秋に自死した男性の件にふれて問いかける。
 「旧津島村の人たちにとって故郷とは、自らが生まれ、育ち、遊び、祭りを楽しみ、恋に落ち、結婚し、子を産み、家族とともにこれからも暮し続けていきたいと願う、唯一無二の土地だった。それほど大きく大切なものを予期せぬ理由で一方的に剝奪される経緯は、あるいは『死』に直結するほどの痛みを伴うものではなかったか」。
 なお本書を読み進める中で、S.アレクシェービッチ『チェルノブイリの祈り』(松本妙子約、初刊1998年、岩波書店。現在・岩波現代文庫)が念頭に浮かんだ。この書も是非とも読んでいただきたいが、終わり方に「子どもたちの合唱」という子どもたちからの聞き取りがある。原発による汚染で強制移住させられるときのことである。
 「私たちの家にお別れするとき、おばあちゃんは、お父さんに物置からキビの袋を運び出してもらって、庭一面にまいた。『神様の鳥たちに』って。ふるいに卵を集め、中庭にあけた。『うちのネコとイヌに』。サーロ(註:豚の脂身の塩漬け。ウクライナの代表的な伝統料理)も切ってやった。おばあちゃんのぜんぶの袋からタネをふるいおとした。ニンジン、カボチャ、キュウリ、タマネギ、いろんな花のタネ。おばあちゃんは菜園にまいた。『大地で育っておくれ』。そのあと家に向かっておじぎをした。納屋にもおじぎをした。一本一本のリンゴの木のまわりをぐるりとまわって、木におじぎをした」。
 原発事故の罪深さ、政府権力者の傲慢さ、故郷の家を追われた人びとの哀しみがひしひしと伝わってくる書である(R)

カテゴリー: 原発・原子力, 書評, 書評R | コメントする

【投稿】ペロシ訪台と半導体--経済危機論(89)

<<暗闇に紛れて訪台>>
8/2の真夜中、ナンシー・ペロシ米下院議長は、台湾・台北市中心部に近い松山空港、普段あまり使われることのない、照明を意図的に落とし、滑走路や地上の灯りまで消した真っ暗闇の空港に降り立った、と報じられている。過去25年間で台湾を訪問した最高位の米国高官が、暗闇に紛れて訪問せざるを得ないという異例な展開となったわけである。囮の米軍用機がマレーシアから離陸し、南シナ海と中国沿岸沿いから台北まで直行した数時間後に、フィリピンの東海岸をわざわざ遠回りして、空母ロナルド・レーガンから飛び立った米軍戦闘機が護衛し、戦闘機の航続距離を伸ばすため

「戦争議長ペロシ」「ペロシ議長は台北から出て行け」と抗議する台北市民

に空中給油タンカーまで伴い、台湾の領空に近づくと、台湾軍ジェット機が護衛を引き継いだ、という。
そのようにしてまで強行されたペロシ議長の台湾訪問は、中国側の強い反対と厳正な申し入れを完全に無視した、一種の戦争挑発行為であり、台湾を紛争の最前線に追いやり、一挙に米中の緊張激化を危険な段階へと推し進めてしまったのである。
中国側は、対抗措置としてペロシ到着の前日、台湾からの輸入停止措置を発表、その対象は3000品目以上に及んでいる。そのほとんどは食料品と農産物である。さらに8/5、中国・外交部は、次の8項目の対抗措置を取ると発表している。
1.中米両軍戦区リーダー間の対話の中止
2.中米間の国防部(省)事務レベル会合の中止
3.中米間の海上軍事安全交渉メカニズム会合の中止
4.中米間の不法移民の送還に関する協力の停止
5.中米間の刑事司法協力の停止
6.中米間の国境を越えた犯罪捜査協力の停止
7.中米間の麻薬取締に関する協力の停止
8.中米間の気候変動問題に関する交渉の停止

中国は米国との軍事協議を打ち切り、ペンタゴンのトップリーダーからの電話にも応じないばかりか、ほとんどの重要な協議・交渉を停止する措置である。台湾をめぐる軍事活動の活発化とコミュニケーションの欠如は、両軍の間に不測の事故・衝突、一触即発の危険な事態が起こる可能性を高めている。

表面上はバイデン政権、ペンタゴン幹部でさえ、台湾海峡に大きな危機をもたらすと警告していたにもかかわらず、ペロシ議長はあえてそうした警告を無視して台湾訪問を強行したのはなぜなのか。もちろん、暗黙の、あるいは用意周到なバイデン政権の了解があったのだと言えよう。しかしそれは広言できるものではない。

<<「なぜまた別の罠に飛び込むのでしょうか?」>>
このペロシ議長の台湾訪問をめぐって、西側報道でほとんど見落とされているのが、台湾積体電路製造公司(TSMC)のマーク・リュー会長との面会であった。ペロシ氏の訪台は、米国が大きく依存している世界最大のチップメーカーであるTSMCに、米国内に製造拠点を設け、中国企業向けの高度なチップ製造をやめるよう説得するバイデン政権のたくらみと重なるものである。バイデン政権は、米国内のチップ生産能力を高めるために、TSMCを米国に誘致するため、アリゾナ州に用地を購入し、2024年の完成を目指している。
 台湾の国営日刊紙リバティ・タイムズは、 TSMC はアリゾナ州にチップ工場を建設する予定であるため、米国でのチップ製造を促進するために新しい法律(Chips and Science Act)によって割り当てられた 520億ドルの恩恵を受けることが期待されている、ただし、この法律では、資金援助を受ける企業は、中国での先端チップの生産を促進しないことを約束しなければならないとされている、と報じている。
TSMCにとって、米国は最大の市場であり、2021年の全売上高の64%を占め(2年前の60% から増加している)、Apple だけでも、昨年のTSMC の収益の 4分の1を占めている。Liberty Timesによると、ペロシとリューの会談のニュースが広まった後、TSMCの株価は1.8%上昇している。したがって、今回の会談は、米国主導のチップ同盟を強化し、中国大陸の技術産業の包囲網を強化することを目的としているかのようにも見えるが、事態は単純ではない。
TSMC側から言わせれば、米国内での半導体製造は賃金もその他のコストも高すぎると広言し、「より大規模で定期的な補助金」なしでは継続できないと要求しており、アリゾナ工場の完成を急ぐ姿勢を示してはいないこと、「不吉な不確実性」が指摘されている。ペロシ氏との会談では、それを詰める必要があったのであろう。
さらに「不吉な不確実性」の一つに、ペロシ氏自身の問題も浮上している。ペロシ議長は、問題のCHIPSおよび科学法案に関するインサイダー情報を利用して家族が現金化したという厳しい批判と非難に直面しているのである。以前からペロシ夫妻は、議会内部情報に基づいた株取引が問題視されており、今回また、米議会がこの半導体業界に多額の補助金を提供するCHIPS法を可決する数週間前に、ペロシ氏の夫であるポール・ペロシ氏が半導体大手Nvidiaの株を100万ドルから500万ドル購入したと暴露されたのである。
今回、中国政府は、ペロシ氏の訪問に対する報復の手段の一つとして、チップ製造に使用される原材料である天然砂の輸出を禁止すると発表している。中国国営メディアのチャイナ・デイリー は8/3、砂の禁止は台湾のチップ製造能力を損なうだろうと書いているが、台湾が中国から輸入している天然砂は3%にすぎない。2021年、中国本土は4325億5000万ドル相当の集積回路を輸入し、そのうち36%が台湾島からのものであることが、税関の数字で明らかになっている。TSMCのリュー氏は、「(中国が)我々を必要としているなら、それは悪いことではない」と述べ、「ビジネスの世界では誰も戦争が起こるのを見たくない。なぜまた別の罠に飛び込むのでしょうか?」と、根本的な疑問を投げかけている。
「別の罠」という、米中緊張激化政策は、まさに米帝国一極支配体制の政治的・経済的危機の現われと言えよう。ペロシ議長の訪台は、図らずもその一端を露呈させてしまったのである。
(生駒 敬)

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【翻訳】「アメリカは、修復を飛び越えて、壊されるかもしれない。」

Japan Times May 31, 2022
“America may be broken beyond repair”  
  Michelle Goldberg, the New York Times opinion columnist

「アメリカは、修復を飛び越えて、壊されるかもしれない。」

昨年リリースされた広告の中で、Arizona州の上院の共和党予備選挙の有力候補者である Mr. Blake Masters は、半自動の武器を、不吉な音楽が流れる中で、ゆらゆら揺らせて「これは短銃身のライフル(short-barreled rife) である。これは狩猟用ではない。人を殺すために設計されている。」と述べた。Mr. Masters にとっては、そのことは、銃が激増することを許すことに反対する議論ではなくて、むしろ、これら武器へのアクセスが何故に権利として重要であるかという認識である。さらに、「The Second Amendment は鴨の狩猟に関するものではない。」とも述べている。さらに、「それは、あなたの家族とあなたの国に関するものである。Mr. Joe Biden が Taliban に Afghanistan を渡した時、Taliban が最初にしたことは何でしょうか? Taliban は国民が保有している銃を取り上げた。」 銃は、この世界の見識では、行き過ぎた、やりすぎる政府 (“ Government overreach”) に対する保証者(物)である。そして、やりすぎる政府は、諸施策の中で銃の規制を試みる。

最近では、共和党員が個人の武器をあえて抑制しようとする人々に対して脅威に聞こえる何かを出版しても、ほとんど注目されない。 Florida州の代表である Mr. Randy Fine は、水曜日(May 25 か—訳者)にツイートしている。「私は、我々の大統領であると主張している、迷惑な人のニュースを持っている。我々の持っている銃を取り上げようとすればあなたは学ぶであろう。何故に the Second Amendment が最初の時点で草起されたのかということを。」

少なくとも国家レベルにおいては、民主党員が暴動/反乱 (“insurrection”) の可能性を保持している、ある政党 (“a party”) [ 共和党のことか—訳者] の協力に頼っている限りは、銃についてのいかなる試みも不可能であろう。Texas州における児童の大量殺戮* は、この動きをほとんど変えてはいない。
* 訳者注:5/24 Texas, Uvalde, Robb primary school で起こった殺人事件。
           児童 19人、教師2 人が死亡、負傷者 17人を出している。

共和党員は、民主党員達が銃所持の背後の事情のチェックのような、もっとも緩い法案を通させることには何の反対意図も持っていない。そして民主党上院議員の Mr. Joe Manchin & Mr. Kyrsten Sinema が議事妨害法案の修正を拒否する限りは、共和党員は、国の政策への拒否権を保持している。増加していてしばしば起こっている大量銃撃の犠牲者たちは、恐ろしい内戦における被害に相並んでいる。最も民主党員の中には、それを認めることに応じない人もいるが、一人で戦わせておけばいい。

2016年の選挙の期間、上品ぶったTrump の言葉が繰り返された。その時、彼は言った。”Second Amendment people” (「修正第二条を信奉する人々」と訳すべきか。— 訳者)は、a President, Hillary Clinton が最高裁判所の判事を任命することを防止することが出来るかもしれない、と。 かっては、何かと隠された暴力のほのめかしであったものが、意味を変えて来ている。とりわけ、1月6日*以降、さらなる単刀直入の脅威として。
Pro Publica** が報じているように、The Oath Keepers militia ***の 10 数名のメンバーが首都の攻撃に関連して逮捕された。しかし、このことは、この組織が、「共和党内での一つの勢力に進化してゆくのを」阻止していない。
訳者注:* 1月6日 : 昨年、2021. Jan 6.
    前年の大統領選挙で不正があったと訴えて、Trump支持の人々    
    は大挙、国会議事堂に押し寄せ乱入した。10人近くの死者を出している。
刑事事件として未だ調査、告訴中。
    ** Pro Publica : 2007 年設立の米国の報道機関で非営利、独立系                       
             で公益を目的とした調査報道を行う。
    *** The Oath Keepers militia : 2009年米国 Nevada で設立された
            American far – right, anti – government militia.
            米国憲法を守ると主張。

Northern California の保守的な地方の Shasta County において、militia と提携した勢力が、行政政務官の委員会で多数を占めた。これは、運動のメンバーが、全国的に展開できる青写真と見なしているもののようである。 The New York Times は報じている。即ち、全国いたるところに「彼 — meaning Trump— を権力から追い払った人々に対抗して、正当と認められるものとしての力の行使について、right-wingな共和党員達は話し合っている」、と。 このような同じ考えの共和党員が、公共の安全保障について、民主党議員と共同作業するのを期待することは、愚の骨頂である。

恐ろしい予期に反する結末、ぞっとするような恐怖のラチェット、これらは、アメリカが無分別な暴力に包囲されればされるほど、American-right の準軍事的勢力が強化される、という現実である。 銃の売買は、大量銃撃 (“mass shooting”) の後に、増加する傾向にある。
共和党員達は、Texas, Uvalde における大量殺戮に対して、教師を武装させ、学校を強化せよ、との要望を倍増させることで、答えていた。 連邦主義者 (“The Federalist”) の、ある論文では、以下のことが議論されていた。 即ち、両親は home-school * をしなければならない。 そうすれば子供たちは、 制御された環境 — そこでは銃は自身の防御の為に安全に保持されるし、不使用の時はロックされる — 」で学習することが出来る。 もしあなたがそう呼ぶなら、それは社会の未来図である。 そこでは、各々の家族は、一つの要塞 (“fortress”) である。
         訳者注:* home-school
              学校に通学せずに、家庭に拠点を置いて学習すること。

銃は米国の子供達の死亡の主要な原因となっている。多くの保守的な人々は、このことは自由の表現に支払う対価であるとみなしている。我々の慣行/制度では、選挙に勝つか否かで、これら保守的な人々に、不釣り合いな権限を与えている。 議事妨害は、上院をほとんど無力にしている。Mr. Trump — 彼は国民の選挙で負けた — は、隠し持った武器を保持することを制限する New York 州の法規を、覆すこともできる最高裁の判事の任命ができた。小さな民主的改革への道程を見ることは増々むつかしくなっている。

進歩的な人々 (“liberals”) の間では、絶望的な感情が大部分を占めている。たとえ、人々がこれら殺されたすべての子供たちの名前を記憶するとしても、最も一般的心情は、「再びあってはならない。」(“never again”)ということではない。 何事も変わっていくことはない、というつらい自認 ( bitter acknowledgement) である。 アメリカはあまりにも病的になっていて、壊されている。それは、おそらく修復を飛び越えている。

二年前、反トランプの保守的な Mr. David French は、合衆国の崩壊の可能性に警鐘を鳴らして、”Divided We Fall” (分割された我々は落ちてゆく)とのタイトルの本を出版した。
この本は、この国の溶解がいかにして起こるか、というシナリオをイメージした二つの章を含んでいる。一つは、California のある学校での mass shooting についてで、この事件について州の人々は、「白熱の怒りで」(“with white-hot rages”) 反発した。Mr. French は、the Second Amendment に抗して、連邦法適応拒否の危機や、民主党支持者の多い州の連邦離脱に至る怒り狂った州の政治家を思い描いていた。
彼はそのことを、警告を促す物語として描いたが、しかし、Texas, Uvaldeの小学校での
銃乱射事件の後、この章を再び読み返してみて、この現実に比べて、怖い光景には感じない。
Mr. French のシナリオにおいては、残虐行為は、人々を動けなくするよりは、むしろ人々を活気付ける効果を出している。彼らは戦う決意をしていて、打ち負かすことを放棄していない。彼らは大胆さと希望を持っている。

現実の悪夢は、無政府主義者のテロの繰り返しがアメリカ政治にもたらす屈折点ではない。それは起こらない。 悪夢は、我々が簡単に躓き、事態が段々と悪化してゆくことに無力であることである。

                  ( 訳: 芋森 )   [ 完 ]

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【翻訳】「自由、恐怖 :アメリカの銃文化」

Japan Times May 30, 2022
“Freedom, fear : America’s gun culture”  Washington AFP Jiji

「自由、恐怖 :アメリカの銃文化」

“Debate rages as world wonders why so many in the U.S. love guns.”

銃を愛好する米国で、なぜそんなに多くと世界が不思議に思う中で、議論が荒れ狂っている。

それは、1776年であった。アメリカ植民地連合が、英国から独立を宣言した。
そして、戦争がおさまった時、合衆国の創始者たち(“the Founding Fathers”)は、深く議論した。 米国民は、個人として小火器(”firearms”)* を所有する権利を持つべきか、又は地方の市民軍団(”militia”)** の構成員としての所有であるべきか?

   訳者注:firearms : ピストル、ライフル、散弾銃等
       militia : 正規軍との対比で市民軍、民間人を要員として編成した
           実力組織。民兵、私兵、義勇兵等多岐に渡る。

5/24 Texas の町で、19人の児童と 2人の教師が殺害された惨劇*の後、外部の人々にとっては、何故に米国人はぞっとするような恐ろしい事件をたびたび起こす、そのような大量虐殺を掻き立てる firearms に執着するのか、という議論が荒れ狂っている。

    訳者注 :5/24 Texas州、Uvalde市の小学校(Robb Primary School)に乱入した18才の少年が銃を乱射し児童 19人、教師 2人が死亡、負傷者 17人を出した。少年は駆け付けた警備隊によってその場で、射殺された。
    米国議会は、その直後、21才未満の銃購入者の身元確認の厳格化などの
    銃規制法案を可決して、6/24のバイデン大統領の署名を得て発効している。          

専門家によれば、答えは、英国から自由を勝ち取った、この国を支える伝統の中に、また最近では個人の安全の為に銃を必要とする人々の間で高まっている信念の中にある、と。
過去20年間 ― この間、米国では、2億丁以上の銃が売れている ― この国は、銃文化の第一段階 (“Gun Culture 1.0”)、ここでは銃は、競技会や狩猟に使われた、から第二段階
(“Gun Culture 2.0”)、ここでは、多くの米国人は銃を家庭と家族を守るに不可欠なものと見なしている、に移行した。
この移行は、約 200億ドル(約2兆540億円)の売り上げを誇る銃産業による宣伝によって拍車がかかって来ている。この産業の前取締役であったMr. Ravan Busseによれば、この業界は、犯罪の恐怖と人種間衝突によって存在価値を高めていると。 
最近の大量殺戮は、「増加する憎しみ、恐怖や陰謀から利益を得るように仕組んだ銃産業のビジネスモデルの副産物である。」と Mr. Busseは先週、オンライン雑誌 “The Bulwork” (防波堤)で述べている。

Guns and the new nation. (銃と新しい国家)
1770年代および1780年代において、新しいアメリカを立案した人々にとっては、銃の所持について、いかなる疑問もなかった。 彼らは述べている。即ち、ヨーロッパの王国やその軍隊による銃砲の独占が、アメリカの植民地の人々が、そのために戦った圧政の根源そのものであった、と。 憲法の父である James Madison は述べている。即ち、武装していることの強味は、米国民が他の国々の人々にたいして有している優位性である、と。
しかし、彼やその他の建国者たちは、この問題は複雑であるということを理解していた。
新しい国々、又は州政府(”states”)は初期の連邦政府(“federal government”) を信頼しなかった。 そして州独自の法体制を欲し、かつ独自の武器も欲した。 彼らは、人々が狩猟することや、野生動物や泥棒より自身を守ることが必要であることは承知していた。しかし、いくらかの人々は、より私的な銃の所持について、辺境での無法性を大きくするのではないかとの懸念を抱いていた。
私的に保持された銃は、暴政への防御として不可欠であったか? 地方の武装したmilitiaは、その役割をまっとうすることが出来たのか? またさらに、militiaは、地方の圧政の根源になってはいなかったか? 1791年になって、妥協が成った。憲法の中で最も解析された名句節である、銃の権利を保証する “the Second Amendment” *「修正第二条」となった。ここでは、以下のごとく規定されている。 
「よく統制された民兵、市民軍は、自由な国家の安全にとって必要であるので、人民が武器を保持し携帯する権利は、侵害されてはならない。」 (“A well regulated militia, being necessary to the security of a free state, the right of the people to keep and bearing arms shall not be infringed”)

訳者注 : 1776年の英国からの独立と憲法制定から15年経った1791年になって
       初めて憲法への追加、改定、修正が行われている。
        この時は、第一条から第十条まで追加されている。
        銃保持の権利は第二条で「修正第二条」と訳されている。
                      参考までに、第一条は、信教、言論、出版、集会の自由を定める。
        尚、奴隷制の廃止/禁止は、1865年、南北戦争終結の時に「修正第13                         条」として制定されている。

1960s gun control. (1960年代の銃規制)
続く200年に渡り、銃は米国の生活と神話の欠かせない部分となった。 Mr. David Yamane, professor of Wake Forest University が述べているように、”Gun Culture 1.0” は、アメリカ原住民への虐殺による征服と奴隷を支配、制御することと同様に、開拓者達にとっては、狩猟や野生動物から身を守る為の欠かせない道具としての銃に関するものであった、と。 しかし、20世紀の初期までに、著しく都市化した合衆国には、銃、火器類で溢れ、他の国では見られないような、注目すべき銃犯罪を体験していた。
歴史家の故 Mr. Richard Hofstadter は書いていた。即ち、この国は 265,000 件以上の  殺人事件、330,000件の自殺、そして 139,000 の銃事件を記録していた、と。 増大する
組織犯罪暴力への反動として、1934年になって、連邦政府は、機関銃(”machine guns”)の禁止と、必要不可欠な銃の登録と課税を決めた。 各々の州は、独自の規制を付け加えた。
例えば、公の場での、明らかであれ隠してであれ、銃器の携行の禁止。
人々はそのような規制に対して賛同していた。 Mr. Pollster Gallup は述べている。1959年において、60%の国民は、個人での “hand-gun” (拳銃)の所持の完全なる禁止を支持していた、と。John F. Kennedy, Robert F. Kennedy さらには、Martin Luther King の
暗殺が、世論を盛り上げて、1968年の厳しい規制に結実した。しかし、銃製造会社や自己主張を強めている全米ライフル協会(“National Rifle Association”) [以下”NRA”と称す] は、”the Second Amendment” を引用して、新しい規制が、郵送での直接の銃売買の規制に、容易に抜け道の売買ができる方法まで規制することを妨げた。

The Second Amendment.(修正第二条)
その後20年に渡り、NRAは“Republicans” (共和党員達)と共に、the Second Amendmentは銃の権利の防御において絶対的であり、銃に対するいかなる規制もアメリカの自由への攻撃であると主張して、共通の根拠を作り上げた。
Mr. Matthew Lacombe, professor of Barnard Collage of Colombia University によれば、
NRAを巻き込んで、銃所有者の為に明らかな銃中心のイデオロギーと社会的一体性を作り上げ宣伝することを成し遂げている。 銃所有者達は、そのイデオロギーの周囲でお互いに団結して強力な投票集団を形成した。 とりわけ、共和党が民主党から議席を勝ち取ろうとしている農村地域においては。
Jessica Dawson, a professor at the West Point military academy, は述べている。NRAは
宗教の権利や米国文化におけるキリスト教の優位と憲法を信じるあるグループと共に共通の動機/根拠を作り上げた、と。 さらに Mr. Dawson は書いている。”the New Christian
Right”* の、道徳の腐敗、政府への不信を信ずること、また、悪の存在を信じること、を引用して、NRA 上層部は、世俗の政府の法律や規制の上に、the Second Amendment を引き上げて、より宗教的に暗号化された言語を使い始めた、と。
   訳者注:“the New Cristian Right”
          1970年代後半の米国で、モラル、家族や宗教の退潮の中で、福音的、原理主義的            プロテスタントの中で広まった政治、社会、文化活動で生まれる。

Self-defense. (自己防衛)
The Second Amendment への焦点の移行を行ったとしても、大きな助けにはならなかった。
1990年代までに、狩猟や、スポーツとしての射撃分野の落ち込みで、銃の売り上げは横這いであった。 Mr. Ravan Busse によれば、このことが、”Gun culture 2.0” への方向に導いた、と。 その時にNRA と銃産業は、自身を守る為には個人の火器 (firearms) が必要であると、言い始めた。 暴徒や泥棒の攻撃に会う、と人々に徐々に宣伝して銃販売を行い、個人の戦術的な備品 (personal “tactical” equipment) として必要であると誇大宣伝した。「15年前、NRA の要請によって、銃産業は攻撃的で戦闘的な銃や戦術的装備のマーケッチングを強める方向に暗転した。」とMr. Ravan Busseは書いている。 
他方、多くの州は答えている。 即ち、人々が許可なくして、公の場で銃を持ち歩くのを許すことによって、犯罪の増加をうすうす気付くことでの不安について。
事実、暴力犯罪はここ20年間、下降傾向にあるが、銃が関係する殺人事件は、最近は急増してきている。 Mr. David Yamane, professor は述べている。このことが”Gun Culture 2.0” の重要なターニングポイントであって、多数の共倒れの死者を出す暴力の誇張された恐怖の中でhand-gun の売買— すべての人種の人々が買っている— の飛躍的伸びが起きている、と。 2009年以来、売り上げが急上昇し、2013年以降、一年に一千万丁(10 million)以上となっている。これらの大部分が、AR-15 type assault rifle と semi-automatic pistol である。
「今日、大部分の銃所有者―特に新しい所有者―は、所有の主要な理由として自己防衛を挙げている。」とMr. David Yamaneは述べている。

                      (訳:芋森)   [ 完 ]

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【投稿】検察審査会、原発マネー不正環流した反社会的企業:関電に「起訴相当」

【投稿】検察審査会、原発マネー不正環流した反社会的企業:関電に「起訴相当」

                            福井 杉本達也

1 関電原発マネーの不正環流で検察審査会:役員報酬補填は「起訴相当」

「関電の原発マネー不正還流を告発する会」が2022年1月7日に大阪地方裁判所の検察審査会に関電の原発マネー不正還流告発を不起訴にしたことは不当であるとの申立てについて、8月1日に第2検察審査会の決定が発表された。検察審査会は役員報酬補塡を巡る問題について、八木誠前会長、岩根茂樹元社長、森詳介元会長の3名に対して「起訴相当」とした。それ以外には、不起訴処分は、いずれも「不当」という扱いであった。

議決書によると、八木氏と森氏については、金品受領で発生した豊松秀己元副社長の追加納税分を関電で負担したとする業務上横領などの罪▽業績悪化で減額した18人分の役員報酬を退任後の嘱託報酬で補塡したとする特別背任の罪を「起訴相当」と判断。岩根氏についても業務上横領罪などについては「起訴相当」とした。本来の訴えた中心は、関電役員への原発マネーを使った金品受領の不法行為であるが、残念ながら不起訴処分は「不当」との判断であった。地検が再度捜査して起訴すればよいが、不起訴にすれば、申立ては出来ない。今回「起訴相当」とした案件を大阪地検が再度不起訴とした場合には、再度、検察審査会にかけ、徹底的に事実の解明をすることが出来る。

一連の問題をめぐっては、関電側が福井県高浜町の元助役、森山栄治氏(故人)から多額の金品を受領し、関連業者に原発関連工事で便宜を図ったほか、業績悪化で減額した18人分の役員報酬計2億5900万円を退任後の嘱託報酬で補塡したとして、告発する会が旧経営陣のうち9人を告発。特捜部は告発状を受理したが、昨年11月に全員を嫌疑不十分で不起訴処分としていた。

議決は7月7日付。特捜部が今後再捜査し、改めて起訴か不起訴かを判断する。不起訴となっても、改めて起訴議決が出れば強制起訴される。残る6人は不起訴不当で、特捜部が再捜査後に改めて不起訴とすれば捜査は終結する。「起訴相当」が2回続けば、強制起訴となる。(図は福井新聞:2022.8.2)

2 関電役員金品受領事件・役員報酬闇補填の告発の経緯

関西電力の役員等20名余が、森山栄治高浜町元助役やその関連会社から計約3億6千万円の金品を受領していた。それらは、関電の発注した原発関係の工事費からの還流であることに疑いの余地はなく、それを受け取ることは犯罪である。八木会長らは辞任し、関電第三者委員会(委員長:但木敬一弁護士:元検事総長)は調査報告書を公表したが、原発マネーの還流が解明されたとは言えず、政治家への不正な資金の流れはなかったのかなど、強制的な権限を持った捜査当局が動く必要があると考え、「告発する会」では、2019年12月13日に、関電役員12人に特別背任罪(会社法960条1項)、背任罪(刑法247条)、贈収賄罪(会社法967条1項)、所得税法違反(238条1項、120条1項)の疑いがあるとして、3272人が告発状が大阪地検に提出された。その後2020年1月31日には、告発人は3371人となった。

また、6月9日には、関電第三者委員会が明らかにした役員報酬等の闇補填問題で、森元会長、八木前会長、岩根前社長を業務上横領と特別背任で追加告発した。告発人は2172人(後の追加をあわせると2193人)となった。2020年10月5日、上記2つの告発状を一本化して、被告発人を森元会長ら9名に絞った告発状が提出され、大阪地検に正式に受理された。

しかし、大阪地検は強制捜査等は行わず、2021年11月9日に嫌疑不十分で全員を不起訴処分にした。地検OBが多数、関電役員に天下りした経過もあり、不都合な真実の隠ぺいに加担した。そこで、2022年1月7日、1194人が検察審査会に申し立てていた。

3 弁護団の声明

8月1日、関電不正マネー還流事件刑事告発弁護団は「日本を代表する公益企業の幹部たちによってなされたこれほど明白な犯罪行為に対し、大阪地検は不可解にも、すべての被疑事実について不起訴処分をした。検察審査会はこの不起訴処分を是認せず、一部の被疑事実については「起訴相当」と結論付け、その余の事実についての全てについて不起訴不相当とした。これは、大阪地方検察庁の本件についての全ての判断が誤っているものと判断したものである。」「今回の関西電力役員による一連の事件は、原発の立地及び維持のために、公益企業である電力会社が原発地元の一部の企業や個人と癒着し、不明朗な金が注ぎ込まれるという原発問題の闇の部分が明るみになった事件であり、また、電力会社の幹部が、消費者に電気料金の値上げの負担を押し付けながら、その電気料金で自分たちの損失を解消したという倫理観の喪失を赤裸々に証明した事件である。」大阪地検は、「直ちに再捜査に着手して、起訴相当とされた被疑事実のみならず、不起訴不当とされた被疑事実についても速やかに起訴すべきである。」との声明を出した。

4 関電は特別背任罪だけでなく、部落差別を助長する「反社会的な企業」である

関電第三者委員会報告書において、森山氏が「社会的儀礼の範囲をはるかに超える多額の金品を提供」してきたのは、「森山氏の要求は執拗かつ威圧的な方法でなされる場合も多く、時には恫喝ともいえる態様であり」(P100)、「あたかも自身や家族に危害を加えるかのような森山氏の言動を現実化するおそれがある、などといったことが綯い交ぜになった漠然とした不安感・恐怖感」(P188)からであるとして、死去した森山氏に一切の責任を擦り付けた。

この、全く説得性に欠ける言い訳に持ち出したのが部落差別である。「1987年末には、関西電力の高浜原子力発電所の従業員による差別事件等が生じ…関西電力の幹部を対象とした人権教育がほぼ毎年開催されるようになり、…この人権研修も、森山氏が関西電力の経営陣を叱りつけるなどの出来事により、関西電力への影響力を維持、強化する効果をもたらした」(P159~P160)とし、「その後年月が経つにつれて、なぜ森山氏を丁重に扱う必要があるのかは不明確になっていく一方で、業務上、森山氏への対応を行わなければならない地位についた者は…とにかく何があっても耐え忍んで」という「歪な構造が形成されたことが推認される」と、部落差別事件を契機として森山氏との「歪な」関係が深まったかのような装いをこらした。部落差別を利用して、公共料金である電気料金を懐に入れた自らの犯罪を隠蔽しようとした関電こそ「反社会的企業」である。8月3日、40年超の古い原発:美浜3号機補助建屋内の一次冷却水ポンプにつながるシール水からの放射能漏れをごまかして、強引に再稼働しようとしたが、延期された。こうした企業に危険な原発の運転をさせてはならない。

(なお、関電の原発マネー不正還流を告発する会では、8月20日まで、高浜町前議員への贈収賄で関電旧経営陣らを新たに告発し、告発人を募っている。)

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【投稿】「バイデン不況へ、ようこそ」--経済危機論(88)

<<バイデンの不況戦略>>
7/31、バイデン米大統領は、コロナウイルスの陽性反応が出て隔離された後、「皆さん、今日またコロナウイルスの陽性反応が出ました。これはごく一部の人に起こることです。症状は出ていませんが、周りの人々の安全のために隔離するつもりです。」とツイートしている。バイデン氏は、おそらくBA.5オミクロン亜種に感染、7/21に初めて陽性反応が出た後、抗ウイルス剤パックスロビド(

「皆さん、今日またCOVIDの陽性反応が出ました。」

Paxlovid、ファイザー社製)による治療を受け、隔離を解除されてから3日余り経って再び陽性反応が出たと発表されている。
ホワイトハウスのコロナウイルス・コーディネーターの Dr. Ashish Jha は記者団に対し、このパックスロビッドは、コロナウイルスによる重症化のリスクが高い人向けの家庭用抗ウイルス療法で、その治療後に「5 ~ 8 % の人がリバウンドしていることを示唆する」データを示している。バイデン氏は、このリバウンドを経験する少数派に入るというわけである。
問題は、隔離解除後、ホワイトハウス内で行われた会議では、マスクを外してスピーチを行い、政府高官やCEOたちとのラウンドテーブルに参加し、いずれの場でもフェイスマスクは着用しなかった、という。”社会的に距離を置いていた “ので安全であると発表している。しかし屋内では、それはマスクを装着しない理由とはならないし、高濾過マスクの装着や換気をよくすることのほうが、社会的距離を置くことよりも感染に対する防御になることが推奨されている。リバウンド中に他の人に感染させている可能性があることは間違いない。意図的なのか、無意識なのかは別として、バイデン氏自身が事態を甘く評価し、軽視していたと言えよう。

4半期GDP2期連続マイナス

この再度、陽性と判断される前の7/28、木曜日に発表された政府の新データ、米商務省経済分析局が発表した国内総生産(GDP)は2四半期連続でマイナス0.9%成長となったことが明らかにされた。
第1四半期の-1.6%から改善されたとはいえ、これは2四半期連続のGDP減少であり、少なくとも市場に関する限り、これがリセッション=景気後退の定義であることは否定しようがない現実である。記録的な高インフレと金利上昇により消費者と企業が支出を控えたため、景気後退の基準を満たしたのである。
ところがバイデン氏は声明を発表し、「昨年の歴史的な経済成長から、パンデミック危機の間に失われた民間部門の雇用をすべて取り戻したのだから、連邦準備制度理事会がインフレを抑えるために行動する中で、経済が減速するのは当然だ」と述べ、これはリセッションではない、リセッションに入ることはない、「失業率は3.6%で、第2四半期だけで100万人以上の雇用が創出され、歴史的に好調を維持している」のだから、「私の考えでは、我々は不況に突入していない 」と強弁している。しかし、新規失業保険申請件数はコロナウイルス政権後の最高値に近い水準にとどまっていることさえ認知できず、事態を甘く評価し、軽視しているのはコロナウイルス評価と同様であるが、ここでは意識的、意図的にリセッション入りを否定しているのである。しかし、米国経済が上半期に縮小したという事実に変わりはないし、変えようがない。
最初は「不況ではない」と言い、次に「減速」、「テクニカル・リセッションは本当の不況ではない」と言い、その次は「不況は短く、浅い」、「間もなく回復するだろう」と、次から次へと不況戦略=ゴールポストが動かし続けられるのであろう。

<<認知症状態のバイデン政権>>
バイデン政権が自慢する公式の失業率は3.6%であるが、実態を厳密に反映してきたシャドーガバメント統計(SGS)では、24.3%、じつに8倍近い開きがある(下図表)。
季節調整済みSGS代替失業率は、SGSが推定する長期離職者(1994年に公式には存在しないと定義された)を調整した現在の失業報告方法を反映したものである。この推定値は、短期落胆労働者を含むBLSのU-6失業率の推定値に加えられる。U-3失業率は毎月のヘッドラインの数字である。U-6失業率は、労働統計局(BLS)の最も広範な失業指標であり、短期落胆労働者やその他のマージン労働者、またフルタイム雇用が見つからずパートタイム労働を余儀なくされている労働者も含まれる。
 失業率と同様、2022年6月のインフレ率は9.1%であり、1980年当時と同じ方法で計算すると20%に近い水準である。この水準は2007年12月の4.1%よりはるかに大きい。コアCPI(食品とエネルギーを除く)は前月比0.7%上昇し、これは前月より速いペースで、前年比では5.9%の上昇である。インフレ率は景気後退とともに今後数ヶ月は低くなる可能性はある。しかし、今のところ、異常に高いインフレが経済を蝕んでおり、6月の米国における雇用削減数は3万2517人で、前月比57%増、年間ベースでは59%増となっている。
物価上昇と連動した雇用喪失の増加は、GDPの低下と並んでスタグフレーションの最後の技術的指標である。しかしバイデン政権は、経済がすべて順調である証拠に、高い雇用率を誇示している。GDP、物価の上昇、負債の増加、個人消費力の低下など、他の重要な要因はすべて一貫して無視ないしは軽視している。雪崩のような雇用崩壊が今年から2023年にかけ到来しかねないのに、意図的な認知症のごとくふるまっているのだとも言えよう。主観的にも客観的にもバイデン政権はもはや認知症状態なのだと言えよう。
ウクライナ危機にロシアを引きずり込んで、ロシアとEUの経済崩壊を企図した制裁がブーメランとして自らに跳ね返り、対ロシア・対中国緊張激化路線をいまだ変更もできず、妥協と話し合いの道さえ開けない、ドル一極支配がいよいよ継続できない事態に追い込まれたバイデン政権、そして米中銀FRBが、自らが作り出した人類史上最大の投機的金融バブルの修正に向けて金利を引き上げ、金融市場がいよいよメルトダウンし、政策の劇的な転換がない限り、史上最悪の経済危機=経済恐慌が到来しつつある、こうした事態を軽視、過小評価している限り、危機打開の道は開かれないであろう。
(生駒 敬)

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【投稿】安倍元首相「暗殺」と「国葬」に米ネオコンの影

【投稿】安倍元首相「暗殺」と「国葬」に米ネオコンの影

                           福井 杉本達也

1 法の支配と法治主義が崩される「閣議決定」による「安倍国葬」

憲法学者の小林節慶応大名誉教授は「憲法上、日本国の意思を決定する機関は、(改憲の場合を除いて)『国会』であり内閣ではない。内閣は、国会が決めた国家の意思を執行する機関である(73条)。」「これが憲法に明記された国家権力の行使に関する基本ルールである。」「元首相の国葬の根拠になる法律は存在しない。」「現憲法下での元首相の国葬は吉田茂氏の一例があり、それも閣議決定による。しかし、違憲は違憲である。」「国葬にはその根拠を定めた法律が不可欠である。だから、今回、『安倍国葬』がふさわしいと岸田首相が考えるなら、時間はあるのだから、議案として堂々と国会に提出すべきである。」「また、『法の支配』(憲法)と『法治主義』(立法権)が侵された。」と述べている(『日刊ゲンダイ』2022.7.26)。

今回の岸田内閣による「安倍国葬」は「暗殺」というショックから抜け出す間もなく唐突に閣議決定され、その根拠も曖昧であり全く説得力に欠ける。あたかも、安倍氏を祀り上げて「暗殺」という事実自体の議論を封じようとする意図が感じられる。

2 まともな発表もなされない奈良県警の警備体制

奈良県警察本部 鬼塚友章本部長は「警護・警備に関する問題があったことは否定できないと考えており、早急に問題点を把握し適切な対策を講じたい」と述べているが、なぜ問題があったのか、一向に明らかとなっていない。また、マスコミも警察からの一方的情報を垂れ流すのみで、まともに警備の不備を分析するような記事は皆無である。関西テレビによると「立憲民主党の関係者によると、ことし4月に泉健太代表が同じ場所で演説したいと申し出ると、警察から『後方の警備が難しい』と指摘され、断念していたことが分かりました。そのため泉代表は、少し離れた場所で演説。警察から車の上で演説することや、車を防弾パネルで覆うことなどを要望されたといいます。」(2022.7.21)。

また、産経新聞の『主張』は「警護の成否は、警護対象が死亡すれば0点である。重大な結果が生じた以上、警備に問題があったことはすでに明らかだ。どこにどんな問題があったのか。反省点を速やかに検証すべきである。疑問点は多々ある。なぜ、やすやすと山上容疑者に背後からの接近を許したのか。1発目の発砲から致命傷となったとみられる約3秒後の2発目まで、警備陣はなぜ安倍氏の防御に動くことはできなかったのか。山上容疑者は犯行の約1時間半前から現場を徘(はい)徊(かい)する姿が確認されている。不審者として職務質問の機会はなかったか。帯同する警視庁警備部警護課員(SP)1人という態勢に問題はなかったのか。奈良県警による警備実施の計画を、警察庁はどこまで把握し、確定していたのか。適切な指示、指導は行われたのか。」(2022.7.13)等々の数々の疑問点が当初より出されている。しかし、警察からはまともな説明も言い訳も一向に出されていない。警察のリークでは、「1発目の発砲を車のパンクの音と誤認した」などという間の抜けた情報のみがマスコミに流されている。事件翌日のNHKニュース7に生出演した元警視総監で警視庁公安部長などを警備、公安の要職を歴任した米村敏朗氏は「不審者がいれば未然に確保することは大事なこと」とし、「ここで言う背後からの接近、この状態というのは不審そのものじゃないですか?なぜそこで動かなかったのか、ということが大きなポイントだと思います」と指摘した。1発目の「銃声を聞いた時に安倍元総理を倒してでも地面に押さえて、自分が守るということができなかったのか。十分に見るべきだろうと思います」と話した(『スポーツニッポン』2022.7.10)。後方警戒の人員は置かれず、ガラ空きの背後から接近されて撃たれ、誰も元首相をカバーしない。素人目にもあまりにも杜撰な警備である。これが全て偶然だというには無理がある。奈良県警、そしてその上部機関の警察庁も一枚かんでの警備の意識的手抜きが引き起こした「暗殺」事件と捉える以外には説明のしようがない。

3 「消えた」銃弾

警察庁側は、安倍氏について銃弾が身体を貫かず、体内にとどまっている傷「盲管銃創」が確認されたと説明した。奈良県立医科大学付属病院によると、「安倍氏の首の右前部に約5センチの間隔で2カ所の小さな銃創があった。銃弾が首から体内に入り、心臓と胸部の大血管を損傷したとみられる。心臓の壁には大きな穴が開いていたという。左肩に銃弾が貫通したとみられる傷が一つあったという。体内から銃弾は発見されていない」(朝日:2022.7.9)・という。そもそも、背後から撃たれたにもかかわらず、首の前部に2か所の銃創があるというのも疑問である。別なスナイパーがいたという説を唱える者もいる。また、警察庁の説明では「盲管銃創」であり、銃弾が体内に留まっているはずであるが、病院の説明では「銃弾は発見されていない」。銃弾が「消えた」のである。もし、弾が出たところとすれば、右首の傷口の損傷は大きくなって、大量出血になる。しかし、現場の写真を見る限り、ほとんど出血がなく、傷は丸く小さい。これも、物理的にあり得ない。自民党の青山繁晴氏は体外に弾は出ず、肺などの体内空洞に大量出血して、失血死したとの説である。その後13日に現場から90m先の壁に「銃弾発見か?」の見出しの記事が出たが(福井:2022.7.14)、これが安倍氏を殺害した銃弾なのかどうかは不明である。容疑者の手製の銃から発射された銃弾かどうか、あるいは安倍氏の体内を「通過」した銃弾かどうかも全く不明である。これでは容疑者がどの銃を使って殺傷したのかの証拠を確定することはできない。

4 容疑者の手製の銃では人を殺傷できない?

銃というのは精密な工業製品である。こんな粗悪な、手製の銃で、人間を殺傷出来るのか。しかも頸元に正確に2発もの銃弾を撃ち込むことができるのか。海上自衛隊トップの酒井良海上幕僚長は19日の記者会見で、「銃の自作能力を自衛隊の教育や訓練で得ることは無理だ。所要もなく、教育訓練を行うこともない」「銃を自ら作り、火薬を調達して自分で作製することは砲雷科の通常の動務では穫得し得ない知識、技術だ」と述べている(福井:2022.7.20)。警察は容疑者は奈良県の山中

で試し打ちしたとか、集合住宅の1室で火薬を乾かしたなどとリークしているが、そのようなもので薬きょうなどを作れるはずもない。子供騙しにもならない戯言である。

 

5 容疑者の動機には論理の飛躍:「安倍氏は本来の敵ではない」

奈良地検は25日、容疑者の鑑定留置を始めたと発表した。「11月29日まで約4カ月間にわたる精神鑑定の結果は刑事責任能力を判断する根拠」となる(日経:2022.7.26)。容疑者のブログには「強い恨みがつづられており、安倍氏については『苦々しくは患っていましたが、本来の敵ではない』」とつづられていたと報道されている(日経:2022.7.18)。近畿大学の辻本典央教授(刑事訴訟法)は「殺意が宗教団体ではなく安倍氏に向かったのは論理の飛躍がある。」と解説する。統一教会に恨みがあったのに、安倍氏殺害に向かったという動機が不明なのである。通常、このような裁判は裁判員裁判で行われる。あまりにも動機があいまいで、論理が飛躍し過ぎておれば、裁判員裁判での公判維持は難しいと検察は考えている。あるいは、裁判を遅らせることにより、国民の目をそらせようと考えているのかもしれない。

6 米国にお伺いを立てなければ何事も決められない対米従属国家日本

白井聡氏は「戦後の国体とは何なのかといえば、いわば日本の上にワシントンが乗っかっている」「戦後天皇制というのは頂点にアメリカがある」とし(『誰がこの国を動かしているのか』鳩山由紀夫+白井聡+木村朗)、また、別のところで白井氏は「対米関係における永続敗戦、すなわち無制限かつ恒久的な対米従属をよしとするパワー・エリートたちの思考である」とし、「岸信介は『真の独立』と言い、…安倍晋三は『戦後レジームからの脱却』を唱えてきた。これら永続敗戦レジームの代表者たちの真の意図が、これらのスローガンを決して実現させないことにある」と書いている(白井聡『永続敗戦論』)。首相退任後の鳩山由紀夫氏は、「特に安全保障においては常にアメリカにお伺いを立てなければ何事も決められない」「日本の官僚と米国、特に米軍が常に密接につながっていて、我々日本の政治家と官僚のつながりよりも、むしろ濃いつながりを持っている」「アメリカの意思を尊重しながら…何でもお伺いを立てなければ物事が決められないという状況」にあると述べている(鳩山+白井+木村:同上)。つまり、“我が国を動かしている”事実上の主権者は日本国民ではなく、米国であり、日本の官僚は米国の意向を忖度をしながら物事を進めている。日本の警察機構を直接指示し、要人の警備を緩める行為は米国の指示を仰がなければできるはずはない。安倍「暗殺」は、「永続敗戦レジーム」がいよいよ賞味期限を迎えたということを意味する。

7 なぜいま「統一教会」か

7月28日発売の『週刊新潮』の見出しは「『安倍』と『統一教会』ズブズブの深淵」である、同じく『週刊文春』の見出しは「統一教会の闇 自民党工作をスッパ抜く!」である。国際勝共連合=統一教会と日本政界・特に自民党、中でも安倍派(清和会)との深い関係はその設立当初より指摘されていた。1968年1月に韓国で国際勝共連合が設立されると、3カ月後には日本でも同組織が設立された。その前年に教祖の文鮮明が来日し、右翼の大物・笹川良一・児玉誉士夫らと会い、岸信介首相がそれをバックした。当初の事務所は岸信介氏の敷地内に設置されている。安倍元首相の弟であり、岸信介首相の孫にあたる「岸防衛相は26日の記者会見で、『世界平和統一家庭連合』(旧統一教会)との関係について、『付き合いもあるし、選挙の際も電話作戦などボランティアでお手伝いいただいたケースはある』と明らかにした。『選挙だから支援者を多く集めることは必要だ』とも語った。」(読売:2022.7.26)と報道されているように、それこそ、「ズブズブ」の関係が現在も連綿と続いている。マスコミは、こうした統一教会と日本政界の関係を長年にわたり掴みながら報道してこなかった。問題はなぜ安倍氏が「暗殺」されてから突然のように、報道が“解禁”され、統一教会と清和会叩きが始まったかである。

清和会を中心とする岸信介首相の系統は戦前の日本のパワー・エリート達であり、米国に背面服従しつつも独自核武装や自主防衛を唱えるなど、米国の支配から独立したいという“願望”を持っている。そのためのバランス外交として、プーチンのロシアとも習近平の中国とも交渉してきた。安倍氏「暗殺」の背景には日本の政治家がプーチン・ロシアに接近する事を絶対に許さない、元トロツキストで根っからの「反ロシア」主義者・強硬派ネオコンの存在がある。

8 ネオコン:ヌーランドの初訪日

アメリカ大使館のツイッターは7月25日「ビクトリア・ヌーランド国務次官を、政治担当国務次官として初めて日本に迎えました。」とツイートした。ヌーランドの父方の祖父はロシアから移民したウクライナ系のユダヤ人である。夫はネオコンの論客でブルッキングズ研究所上席フェローのロバート・ケーガンである。ビクトリア・ヌーランドはオバマ政権下の2014年、米国務省欧州・ユーラシア担当次官補として、マイダン広場でのネオナチによるデモが始まると現地に姿を表し、ネオナチに飴玉を配ったりした。ウクライナのネオナチ・反露派の指導者と面談して支援を約束したことから「マイダン革命」が起きた(高野孟:2022.4.19)。トランプ政権下では冷や飯を食ったが、今回の訪日では国務省No3の格上の立場で、「岡真臣・防衛審議官と鈴木敦夫・防衛事務次官」「森外務事務次官」と合い、「G7の政務局長でもある山田重夫外務審議官との会合および夕食会」に出席したとツイートした。ヌーランドは日本の自主独立路線を否定し、余計なことは考えずに、ひたすらウクライナのように米国の先兵として最後の一兵まで血を流せと命じたのであろう。台湾と日本を次のウクライナにして中国と戦わせ、中国の国力を弱めるというのが今後のネオコンの方針である。しかし、米国自身は戦わない。その延長線にペロシ米下院議長の台湾訪問計画が浮上している。

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【翻訳】プーチン大統領の健康状態をめぐる不確実性

Japan Times  June 21, 2022
“Uncertainty surrounds status of Putin’s health”  Paris AFP Jiji

【翻訳】 プーチン大統領の健康状態をめぐる不確実性

Kremlinからの、世に知れた彼の逞しいイメージ以外に注目すべき明らかなことは、ほとんど現れてきていない。

シベリアの鹿の角から抽出される血の風呂に入る。
彼の排泄物は、分析を避けるため付き添い職員によって掬い取られる。
緊急な医療手術等のためとしての謎めいた不在。

 ロシアの大統領 Vladimir Putin, 彼はこの10月に70歳になる、の健康状態についての情報、意見等は煽情的で気味が悪い。同様に証明は不可能である。彼がUkraineへの侵攻を命じて以降、Europeの将来にとって重要な彼の健康状態について、それらの情報等は彼の健康状態を、ほとんど描き切れていない。
 Putinの20年に及ぶ統治下で、Kremlinより公にされる、胸を広げた逞しい写真以外に、彼の健康について注目すべきニュースはほとんどない。しかし、Putinが隣国に仕掛けた戦争によって綿密な調査の報道が増えてきている。

What are the claim? ( 意見、主張とかは何か?)
 Putinの健康に関する最も詳しい調査は、公開される情報をデータとして使っているロシア語のニュースサイト”Proekt”*によってこの4月に公にされた。 そこでは以下のごとく結論つけられている。即ち、大統領の南部のリゾート Sochi への旅行には、多くの医師たちも共に移動していたと。彼らの中には、甲状腺癌(“thyroid cancer”)の専門医師 Yevgeny Selivanov もいた。ここ数年来、彼のSochi訪問は時としてPutinの突然の不在と同期していた。
 また、以下のことも言われている。即ち、長生きを保証するためにPutinによって、よく行われている方法は、シベリアの鹿の角の血液の入った風呂に入浴することである。この方法は、シベリア出身で彼の友人である国防大臣 Sergei Shoigu が推薦した。
 フランスの週刊誌 “Paris Match” は今月以下のごとく報じた。2017年のフランス訪問と2019年の Saudi Arabiaへの訪問の際、Putinは、あるチームを伴い、彼がトイレに行くときはいつも排泄物を処理して、それ以外の人が彼の小便や大便を医学的に分析できないようにした、と。 さらにもっとセンセーショナルな報道として、米国誌 “News Week” は6月に以下のごとく報じた。 アメリカの諜報機関を引用して、Putinは4月に進行癌の手術を行った、と。 しかし、U.S. National Security Council は、そのような報告の存在を否認した。
 Ukraine’s military intelligence chief, Major General Kyrylo Budanov はNews Weekとの5月中旬のインタビューで、証拠を示さずに、Putinは癌を患っていると主張した。
 またProekt は報じている。即ち、Kremlinは見せかけの事務所(”fake office”)をSochiに作り上げた。それをPutinのモスクワ郊外の住居のように称している。黒海のリゾートで休んでいて、Russiaの首都で仕事をしているかのように、と。
  * 訳者注“Proekt” is Project in English and is an independent Russian media
     specializing in in-depth journalism..

What information is there ? (どんな情報があるのか?)
 Kremlinが、Putinが健康を損ねていると確認したのは、たった一回だけで2012年の秋だった。気まずそうに見えた後に、4~5の会議をキャンセルし、公から姿を消した。Kremlinは、その時Putinは筋肉を傷めたと報じた。 ある新聞は、彼はモーター付きハンググライダーで、鶴と共に飛んでいて、離れ業(”stunt”)の時に、痛めていた背中を悪化させた、と報じていた。 しかし、Proektは、彼の大きな健康上の問題はここで始まった、と報じている。
 COVID-19 pandemic は、時々Russian リーダーの変わった振る舞いを見せている。
Kremlin は、彼はワクチンを接種したと述べた。しかし、ほとんどの世界のリーダーとは異なり、彼の接種の写真は出ていない。彼に接する人たち、ジャーナリストをふくめ、は最も厳しい予防策、例えば数日の検疫隔離に従わねばならない。 これを受け入れない世界のリーダー達、例えばフランス大統領 Emmanuel Macron や国連総長 Antonio Guterres は今日では悪名高くなった長いテーブルの端に座らされていた。Kremlin の要求を受け入れた人々、例えば、Armenia の首相 Nikol Pasinyan 等の人々は、握手や抱擁までも許されていた。
 Ukraine についての Shoigu国防相との4月下旬のミーテングは、またもや火に油を注ぐようだった。Putinが、体の震えを抑えるために、テーブルをしっかり握った、との誰かがちらっと見たという話が流れ、多くのビデオも、Putinの片足がミーテングの間、モジモジとしているのを映していた。
 他方、Kremlinは、Putinの年一回のRussia国民との電話での直接会話行事 (通例では6月に行われる) を説明なしに、後日に延期した。Putinを守るために多大な努力がなされてきている。2020年の記者会見では、検疫と検査を事前に受けた一握りの報道記者が彼とのミーテングの部屋に入ることを許された。他の多くの記者たちは別の部屋で。
2021年も同じ方法で行われたが、記者たちの前列からPutinの机までの距離は遠く離れていた。 今では、世界のほとんどの国で政府の行事は通常に戻りつつあるが、Putinの行動、振る舞いは、ほとんどが国内であり、ビデオを通じてである。

What does the Kremlin say ? (クレムリンは何を述べる?)
 Putinの報道官 Dmitry Peskov を通じてKremlinは、ロシアの大統領は、重大な健康上の問題を抱えているとのすべての言動、主張を強く否定してきた。
 外務大臣 Sergey Lavrov は、5月下旬フランステレビ TF1 とのインタビューで、Putinが病気であることを否定した。彼は続けて「正気の人々であれば、この人に何らかの病気の兆候を見ることができるとは、私は思わない。」さらに続けて、ロシアのリーダーは「毎日」国民の前に姿を見せていると。
 ベラルーシ(“Belarus”) の大統領 Alexander Lukashenko, 彼は西側より嫌われているが、 Putin とのしばしばの face-to-face での対話者である、は3月に日本TVとのインタビューでロシアのリーダーは、野蛮な健康 (“rude health”) であると述べた。「もしあなたが、大統領Putinに何か悪いことがある、または何かが起きていると考えているならば、あなたはこの世でもっとも哀れな人である。」と。
 最近の公へのお出まし (“public appearance”) ― Peter the Great (ピヨートル大帝) フォーラムやトルクメニスタンの大統領 Serdar Berdymukhamedov との会談― において、Putinには少しも身体的ひ弱さが見受けられていない。

Why does it matter ? ( なぜそれが重要か?) 
 Putinは、議論余地なきロシアのリーダーとして存在しているし、ほとんどの観察者、評論家は、彼が2024年の第三期への継続する権限を追い求めることを期待している、最近の彼にそのようにするように認め許した、議論のあった憲法の改正の後、明らかな後継者はいない、そして、ロシア軍隊の指揮官として、Ukraineに侵攻したのは、Putinの決断であった。
 「この国は、その人が動かし制御している身体、感情の健康についての真実の言葉を知らない。」と Proekt の the editor-in-chief Roman Badamin は述べている。続けて「赤いボタンを押すことによって、人間らしさ、慈悲(”humanity”)のすべてを破壊することが出来るであろう一人が、健康であるか否かを、この世界は知らない。」  

                          (訳:芋森)   [完]

カテゴリー: ウクライナ侵攻, 翻訳 | コメントする

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【書評】『東電原発事故10年で明らかになったこと』
   (添田孝史著、平凡社新書、2021年2月発行、840円+税)

東電原発事故10年で明らかになったこと

 2020年9月、福島第一原発の立地する福島県双葉町に、東日本大震災・原子力災害伝承館が開館した。53億円の事業費を国が負担し、福島県が運営している。3階建て約5000平方メートルの伝承館には「災害の始まり」「事故直後の対応」「長期化する原子力災害の影響」など6つのブースがあり、消防士の装備などの実物など映像や模型も使って、原発事故の様子を残そうとしている。
 著者は言う。「展示を見終わると奇妙なことに気づく。高い津波が襲ってきました。福島第一は放射性物質を漏らしました。住民たちは長く苦労し、それでも復興に挑戦しています、という流れで展示されている。『なぜ、事故は起きたのか』にはまったく触れていないのだ。/国や東電は『絶対事故は起こさない』と説明していたのに、どうして事故を防げなかったのだろう。事前の対策は十分だったのか。津波に襲われた原発は他にもあったのに、なぜ福島第一だけ事故を起こしたのか。そんな疑問に伝承館の展示や説明は何も答えてくれない。つまり(略)国や東電が事故前に何をしていたかという内容は、すっぽり抜け落ちている」。
 続けて言う。「伝承館には、事故を経験した人たちの生の声を聞くことができる『語り部講話』の部屋もある。ところが朝日新聞の報道(2020年9月22日)によれば、伝承館は語り部に対して東電や国の批判をしないよう求め、原稿を確認、添削しているのだという」。
 本書はこの謎に、年代記的に迫る。
 「日本の原発は、耐震設計審査指針によって、どんな地震を想定するか、どんな強度で建屋を造るのかなどが定められていた。1978年に原子力委員会が策定した耐震方針は、想定している直下型地震の規模や活断層の定義などが時代遅れで過小評価になっており、90年代から地震学者が批判していた。しまし、電力会社の抵抗があり、指針はなかなか改定できなかった。原子力安全委員会は2001年にようやく耐震指針の見直しに着手、2006年9月19日に、新しい耐震指針がき決まった」。
 そしてこれによって、指針改定以前の古い原発も、耐震安全性を再チェックすることが求められた(耐震バックチェック)。
 これに関連して2007年1月16日、各電力会社の津波対応の会議では津波の余裕率の全国平均は0.96──想定水位の1.96倍の津波が襲っても、施設や設備に影響はなく、大事故が起きないことを意味している──であった。「しかし福島第一は余裕がゼロで、もっとも余裕がなく、表(原発余裕率の一覧表)中で唯一『対策実施検討』と書かれていた」。
 またJNES(原子力安全基盤機構)は、2007年4月、最近発生した国内外の原発事故を分析して、原発名を伏せた形で福島第一に同様の浸水があった場合にどうなるのかを報告書に載せていた。それによると、「解析した別のトラブルでは炉心損傷につながる確率は1億分の1程度なのに、洪水や津波で水につかった場合に炉心損傷に至る確率だけは100分の1より大きく、桁外れに高いリスクが明らかになっていた。/この時点で、津波のリスクは、数多い原発のリスクのうちの一つ、と片付けられないことが数値的にはっきりしていたことがわかる」。
 これについて東電に、東電設計から津波を詳しく計算した結果──敷地南部では15.7メートルの津波にもなり、1号機から4号機周辺が広範囲に水に浸かる、4号機では建屋が2メートル以上も水に浸かると予測される──が届き、この数値は想定設計5.7メートルを大きく上回るので、対策が取られようとしていた。
 ところがこの改善に向けての取り組みを検討しようとしていた矢先の2007年7月16日に新潟県中部地震が発生する。この地震で柏崎刈羽原発全7基が停止し、代替の火力発電の燃料費や復旧費用などがかさみ、東電は28年ぶりに赤字に転落するのである。
 ここで東電は2008年7月31日、流れが変わる方針を打ち出すことになる。すなわち「・バックチェックは従来の5.7メートルの水位で進める。・地震本部の津波地震を採用するかどうかは、土木学会で検討してもらい、その後に対策を実施する。・この方針について、有力な学者に根回しする」となった。換言すれば、津波地震の対策をするかどうかは土木学会に依頼し、その検討の結果を待つということで時間稼ぎをするという姑息な方針の採用となったのである。しかも専門家への根回しをしつつである。
 またこの後11月13日の会議では、津波地震とは別タイプの地震「貞観地震」(869年)による被害も課題とされたが、これに対する対策もバックチェックに取り入れないことも決定されている。
(これに関して言うならば、東北電力は女川原発について、貞観地震をバックチェックに取り入れて津波想定を見直し対策を立てて実施した。また日本原電は、(東海第二原発の)津波対策を着々と進め、「バックチェック最終報告書は従来の土木学会手法や地元茨城県の津波想定でまとめ、実際の対策は地震本部の津波地震に備える形で進めた」。つまり公開された最終報告書以上にこっそり上乗せした対策を取った。しかしこのことは「東電に配慮して」非公開で進めていた。)
 そしてこの津波リスクへの対応がずるずると先送りされてきた構図では、東電、根回しされた専門家たちに加えて、本来チェックの役割を果たすべきであった保安院も、東電や資源エネルギー庁に「配慮して」、そうではなかったことが明らかにされてくる。その詳細は本書を見ていただくとして、こうした三者三様の無責任な対応が津波に対して大事故を招いた前提を作り出していたことは間違いがないであろう。
 本書には、この後の原発事故の検証と賠償──原発への賠償の目安となる中間指針は、2011年8月にまとめられた。「東電はこれをもとに自主的基準をつくり被害者に賠償を進めた。しかし政府の指針は、少なくとも最低でもこれだけは賠償しなさいというラインを示したものなのに、東電は指針があたかも賠償の上限であるかのように振る舞ってきた」と指摘されている──の問題点および国の原子力政策に対する疑問も提出されている。
 つい先日の7月15日、岸田総理が「最大9基の原発稼働」を指示したというニュースがあり、また14日には東京地裁が東電旧経営陣に13兆円の賠償命令が出た。共に今後の成り行きは不透明であるが、原発への動きが再加速されようとしている現在、原発事故10年で見えてきた事実をここで今一度確認しておくことは必要である。(R)

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【投稿】米vs.中東:ドル支配の危機を露呈--経済危機論(87)

<<バイデン中東歴訪で原油価格急騰>>
7/18、バイデン米大統領が中東歴訪を終えるや、原油価格が急騰した。中東歴訪前までは、景気後退懸念による需要減退から、原油価格はここ一カ月で最大の下げ幅を記録、100ドル/バレルを下回る水準に下落していたばかりであった。
景気後退懸念は、7/13に発表された消費者物価指数(CPI)がこの6月にさらに加速し、9.1%と40年ぶりの高水準を記録したことからくるもので

バイデン氏、サウジの原油増産公約を勝ち取れず、原油急騰

あった。値上げ率が最も大きいのは、家賃、食料、燃料などの最低限の必需品目であった。インフレ調整後の実質平均時給は前年同月比3.6%減と、07年までさかのぼれるデータで最大の落ち込みとなり、実質賃金はこれで15カ月連続のマイナスを記録。インフレ圧力は後退していると期待していた政権やその取り巻きにとって、予想をはるかに上回る強力な基本的物価上昇圧力は衝撃であったと言えよう。(下図、上:消費者物価指数(CPI)、下:実質賃金)

 エネルギー価格を何としても抑え込むことが、バイデン政権にとって最大の課題となり、バイデン氏は世界の原油供給が増えれば、世界の原油価格が下がると主張。しかし一方で、足元の米石油独占資本が供給を低く抑え、市場支配力によって高価格に加担して最大限の利益をむさぼっていることを放置していては、何の説得力も持たない。
 そこでバイデン氏は、サウジアラビアと他の湾岸産油国に対し、石油生産を増強するよう求める中東歴訪を演出、サウジアラビア政府と米国政府はエネルギー問題、投資、宇宙開発、通信、保健など、18項目からなる協力協定に署名、ホワイトハウスによると、サウジアラビアは7月と8月に予定していた原油の掘削量を50%引き上げることを約束したという。歴訪中のサウジアラビアで行われた記者会見の中で、米国内のガソリン価格は連日低下し続けている、そして劇的に価格が低下するのは2週間後になるとまで言い放ったのであった。

<<「アメリカに残されたのはNATO諸国だけ」>>
ところが、である。バイデン氏帰国後、7/15、ニューヨークの原油先物市場は、2.1%上昇、7/18には2.4%上昇し、1バレル103.58ドルへの急騰である。その理由が、原油増産の約束を取り付けられなかった、サウジアラビアが原油供給を

バイデンに対するMBSの回答

強化するという誓約をすることなく終了したことからくるものであった。サウジアラビアは米側に追従することを拒否し、増やすことが可能なのは「生産量」ではなく「生産能力」だと表明していたことが明らかになったのである。バイデン氏は体よくあしらわれたのであろう。
それどころか、サウジアラビア皇太子ムハンマド・ビン・サルマン氏は、政府系紙・アルアラビーヤによると、3時間にわたる会談の中でバイデン氏に対して、イラクとアフガニスタンでの米国の失敗によって示されるように、ある国の価値観を力で別の国に押し付けようとすることは逆効果である、米国が協力するために残されたのはNATO諸国だけである可能性があるとまで警告したという。
さらに、同皇太子は、ジャーナリストのジャマル・カショギ氏の殺害は「遺憾」だが、米国の手はきれいではなく、他のジャーナリストも平気で殺されている、イスラエル軍に殺害されたパレスチナ系アメリカ人ジャーナリスト、シリーン・アブ・アクレについて「何をしたのか」とバイデンに詰問したという。
バイデン氏は、「私がここに来たのは、サウジアラビア皇太子に会うためではない。<GCC首脳+3首脳>会談に参加するためだ」と、語っている。3首脳とは、<アメリカ+イラク+エジプト>を指すが、対ロシア、対中国、対イランの制裁、対立激化路線は、エジプト、ヨルダンを含めてどの国の指導者からも明確な指示を得られなかったのである。

アメリカのドル一極支配体制の瓦解が、今回のバイデン氏の中東歴訪によって誰の目にも明らかな客観的現実として露呈された、と言えよう。
(生駒 敬)

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【投稿】参院選―高揚感なき大勝の自民党と、リアリズムが欠如する野党の敗北―

【投稿】参院選―高揚感なき大勝の自民党と、リアリズムが欠如する野党の敗北―

                         福井 杉本達也

1 安倍元首相の「暗殺」で、高揚感なき大勝の自民党

日経新聞は「参院選に大勝した岸田文雄首相に、高揚感はなかった。」(2022.7.12)と書いた。「もう一つの中心がなくなった。どうやって安定をつくるのか、考えないといけない」と岸田氏は漏らしたという。「もう一つの中心」は暗殺された安倍晋三元首相であり、「『楕円の理論』を参考にしてきた。二つの中心がある方が、一つよりも安定するとの考え」であるという(日経:同上)。

安倍氏は「戦後レジームからの脱却」、「日本を取り戻す」をスローガンに掲げて二度内閣を率いた。この「戦後レジーム」とは、白井聡氏の言葉を借りれば「永続敗戦レジーム」・「対米従属レジーム」であり、“戦後国体”としての「アメリカを事実上の頂点とする体制」である。しかし、安倍氏がこの米国を“主権者”とする「戦後国体」に全面的に楯突いたかといえばそうではない。安倍氏は「積極的平和主義」を掲げ、日米戦力の一体化(=自衛隊を米軍の補助戦力とする)を図り、米国の“弾除け”として「戦争をすることを通じた安全保障」を(表面上は)目指してきた。だが、その中で唯一、特異な外交がロシアとの関係強化であった。

2 対米従属下での安倍氏による矛盾に満ちた対ロシア外交の評価

安倍氏の支持基盤は自民党内というよりも、日本会議や神道政治連盟・統一教会といった党外の極右にあり、党外の支持基盤を背景に自民党を乗っ取った状態にあった。しかし、そうした安倍氏の支持基盤のイデオロギーとは裏腹に、任期中、安倍氏はロシアのプーチン大統領と27回も会談を重ねた。ロシアは長大な国境を持っている。中国を始め隣国と多くの領土問題を抱えていた。しかし、プーチン氏の時代にそのほとんどが解決し、唯一残ったのが日本の「北方領土」問題である。プーチン氏はこれを解決しようと安倍氏と交渉を重ねた。しかし、事務方として折衝した谷口正太郎氏が、ロシア側の「歯舞・色丹の二島を返還した場合、米軍基地は置かれるのか?」とのロシア側の問いに、「可能性はある」と回答したことによって、交渉は最終的に打ち切られることとなってしまった。

交渉中断まで。ロシア側が安倍氏を交渉相手として信頼していたかについて、佐藤優氏は「日米同盟の強化とともに、日米同盟の枠内で日本の独立を確保することを真摯に考え、そのためにロシアとの関係改善を図っていた。それを読み取っ」ていた。それがプーチン氏からの安倍氏家族への弔電に表れているとする。「私は晋三と定期的に接触していました。そこでは安倍氏の素晴らしい個人的ならびに専門家的資質が開花していました。この素晴らしい人物についての記憶は、彼を知る全ての人の心に永遠に残るでしょう。尊敬の気持ちを込めて ウラジーミル・プーチン」と書かれている。佐藤氏は続けて、「安倍氏は、ロシアが強くなることに賭けた。強いロシアと合意し、協力関係を構築する。アジア太平洋地域においてもロシアを強くする。それが日本にとって歓迎すべきことだ。地域的規模であるが、アジア太平洋地域において多極的世界を構築する。ロシアの弱さにつけ込むという賭けではなく、ロシアの力を利用し、強いロシアと日本が共存する正常な関係を構築することだ。これが、安倍が進めようとしていた重要な政策だ。」というモスクワ国際関係大学ユーラシア研究センターのイワン・サフランチューク所長の言葉を紹介している(プレジデントオンライン:2022.7.11)

これら一連の外交が気にくわなかったのが米軍産複合体やネオコンである。米外交問題評議会日本担当のシーラ・スミスは「明らかな失敗…1つはロシアのリーダー、ウラジミール・プーチン大統領に強くすり寄ったが何の結果も生み出せなかった」ことであり、安倍氏はロシアを中国から引き離し、ロシアとの戦後の領土問題を解決できると信じていたが、これは現実を知らない考えと見られているし、実際効果がなかった。アメリカでの見方では、同氏がプーチン氏と劇的解決を見出せると期待したのは、政治家として考えられない過ちであった。」と酷評した(『東洋経済オンライン』2022.7.11)。米国は安倍氏の面従腹背外交を何としてもつぶしたかったのである。

3 ブリンケン米国務長官の「弔問」は日本外交への脅し

米国のブリンケン国務長官が11日、岸田を表敬訪問した。訪問先のタイからの帰国途中に、予定を変更。安倍の死去を受け、弔意を表すために来日したと公式には発表されている。ブリンケンは「安倍氏は『自由で開かれたインド太平洋』という先見性あるビジョンを掲げた」と持ち上げたが、「自由で開かれたインド太平洋戦略」とは対中包囲網である。ブリンケンは岸田首相に対し、NATO諸国にならい、防衛費倍増しGDP比2%にすること、日米の軍事力一体化を進めることを念押しするために、わざわざ日本に立ち寄ったのである。さらに、岸田首相に「安倍氏のようになりたくないだろう」と暗に示すために立ち寄ったのである。

この間、岸田政権は中ロ両大国を敵に回した米軍軍産複合体に追随する愚策を繰り返しており、駐日ロシア大使館の外交官の追放まで行った。そのため、ロシアからの逆制裁を受け、サハリンⅠ・Ⅱなどのエネルギー権益を没収すると脅され、天に唾する結果を招来した。今後、冬に向かって、都市ガスの節約を呼びかける「節ガス」制度の設計をしなければならないところまでに追い詰められている(日経:2022.7.12)。7月12日付けの毎日新聞も「今回のロシアの動きは、対露政策を巡る日本の矛盾をつく形で『ロシアに試されている』(経済産業省幹部」との動揺が広がる)と書いている。国民に湯を沸かすエネルギーやリビングのあかりも灯せない、しかも、物価はどんどん上がる、にもかかわらず米軍産複合体に脅されて身動きも取れないというのでは、いくら参院選で大勝しようが、岸田政権は針の筵である。顔色が冴えないのも無理はない。

上記・佐藤氏の文章で、サフランチューク所長は「現在の日本政府は、別の政策をとっている。国際関係で米国との連携を強め、ロシアとの関係が著しく後退している。日本の主張は力を失っており、制裁でロシアを弱らせるという方向に傾いている。そのため短期的に、安倍氏の遺産は遠ざけられる。」(佐藤訳:同上)と書く。

リアリストのサフランチューク所長は、しかし、と続けて「中長期的展望において、安倍氏が提唱した概念の遺産、すなわち日本が世界の中で独立して生きていかなくてはならず、どのようにアジア太平洋地域の強国との関係を構築し、強いロシアと共生するのかという考え方は、日本の社会とエリートの間で維持される。いずれかの時点で、日本はこの路線に戻ると私は見ている。なぜなら、それ以外の選択肢がないからだ。」(佐藤訳:サフランチューク所長(同上)と述べている。佐藤氏は、最後に「安倍首相時代の日本外交は、一貫して対話重視であり、どこまでもリアリズムで戦略的でした」(同上)と結んでいる。

4 リアリズムが欠如する野党

元外務省国際情報局長の孫崎享氏は「参議院選で立憲、共産ともに敗北。護憲勢力たる両党がウクライナ問題で、糾弾・制裁のグループに入った時点で敗北は明確」(孫崎享:2022.7.11)と書いた。片山杜秀氏は「国際社会はロシアを非難しているという。だが、それは一種の戦略的レトリックだと承知しておく必要がある。むろん棄権国がロシア支持というわけではない。でも、ロシアと、その幾分の後ろ盾になっている中国の顔色を無視できない国々であるには違いない。しかも、金満国の米英や欧州連合 (EU)の主導する世界にあまり賛成でない国々でもあろう。世界の現実を見誤ると、持たざる国、日本の将来は危ういと思う。」(『エコノミスト』2022.6/11)と書いている。「アベ友」の一人:萩生田光一経済産業相は対ロ制裁について「勇ましいことを言う人がたくさんいるが、日本の国民の暮らしも日本経済も守らなければならない」と語った(日経:2022,6.11)。どちらがリアリストかは明らかである。逆制裁で明日の“タキギやメシ“にも事欠くような状況に国民を追い込もうと主張する政党に誰が投票するというのか。

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【投稿】参院選:自民大勝と野党共闘--統一戦線論(77)

<<比例区・野党4勝28敗>>
今回の参院選、「野党共闘」の機運がしぼみ、「バラバラ野党」と酷評される野党共闘の現状からすれば、野党はよくぞ持ちこたえた、と言えるのかもしれない。
その象徴が沖縄選挙区での、オール沖縄の野党統一候補・伊波洋一氏の当選である。オール沖縄は「選挙イヤー」の今年、名護市長選をはじめ4市長選で連敗してきており、逆風下であった。対して、与党候補・古謝氏の応援には、岸田首相や菅義偉前首相、茂木敏充幹事長などを次々と送り込み、物心両面、保守勢力全組織を挙げての全面支援態勢で勝利を当然のものにせんとしていたにもかかわらず、オール沖縄が競り勝ち、与党は敗北した。大勝したはずの自民にとってこの沖縄での古謝氏敗北の打撃は極めて大きい、と言えよう。

しかし問題は、沖縄以外の1人区の野党共闘である。前回の2019年参院選は、立憲民主、共産、国民民主、社民の野党4党が全1人区で候補者を一本化し、10選挙区で勝利している。しかし今回は、全国32ある改選数1の「1人区」で、自民党が28勝4敗となった。野党にとっては4勝28敗、野党の大敗である。
共闘が崩壊し、それでもかろうじて自民との一騎打ちが11選挙区にとどまり、野党系が議席を得たのは、立憲民主現職が勝利した青森と長野、国民民主党の現職が勝った山形のみであった。過去2回連続で野党系が勝利してきた岩手、宮城、新潟をはじめ、複数の1人区で与党候補に競り負けてしまったのである。統一候補でこそ勝てるものが、それぞれの党勢拡大のために足を引っ張り合った結果がこれである。
野党共闘を崩壊に導き、自民大勝をもたらした立憲民主党幹部、連合労組幹部は責任を問われてしかるべきであろう。野党第1党の求心力を自ら放棄した泉党首をはじめとする執行部は刷新されるべきであろう。
同時に徹底して野党共闘を追求すべき共産党も、事実上の野党統一候補路線、押しかけ統一候補路線を放棄し、独自候補による共産党比例票拡大にのみ戦略的重点を置いた選挙戦略そのものが、共産党の後退をもたらしたことを深刻に反省すべきであろう。

<<政局転換の余地>>
こうした野党共闘後退の結果、改憲勢力は、与党の自民、公明党に加え、日本維新の会と国民民主党を合わせて3分の2を超える勢力を獲得した。数だけをみれば、4党で改憲発議に必要な3分の2を超えている。しかし選挙戦、街頭演説ではほとんど9条改憲論議は素通りである。
なおそれでも、選挙戦終盤、安倍前首相が銃弾に倒れるという異常事態で、危惧された「弔い選挙」による自民党の超圧勝に至らなかったこと、自民を超右派路線で補完する維新躍進による野党第一党化も阻止されたこと、与党すり寄り路線に転じた国民民主党が後退したこと、などは、まだまだ政局転換の余地があることも同時に示していると言えよう。

あらためて、選挙結果を確認すると、

第26回参院選 全議席 新勢力
自民  119 ( 8 増 )
立憲   39 ( 6 減 )
公明   27 ( 1 減 )
維新   21 ( 6 増 )
共産   11 ( 2 減 )
国民   10 ( 2 減 )
れいわ   5 ( 3 増 )
N党   2 ( 1 増 )
社民   1 (横ばい)
参政   1 ( 1 増 )
無所属 12( 3 減 )

比例代表 党派別得票・獲得議席
党派  改選 今回   得票               得票率
自民   19      18      18,258,791    34.4%
維新     3       8        7,845,985    14.8%
立民     7       7        6,769,854     12.8%
公明     7       6        6,181,431      11.7%
共産     5       3        3,618,342       6.8%
国民     4       3        3,159,045       6.0%
れいわ 0      2         2,319,159       4.4%
参政     0      1          1,768,349      3.3%
社民     1       1          1,258,621      2.4%
N党     0      1          1,253,875      2.4%

この比例区の得票数、得票率から現時点で留意すべき点、指摘されるべき弱点として、
・社民党・福島党首が何とか持ちこたえ、政党要件としての得票率も2%をぎりぎり確保したこと。
・共産党は、最重点を置いた比例区得票拡大戦略にもかかわらず、2013年515万票、2019年450万票、そして今回360万票と得票数を大きく減少させていること。
・れいわ新選組は、前回228万票で、今回231万票、2議席確保したが微増であり、山本太郎氏は9年前の東京選挙区で66万6千票獲得していたが、今回56万5千票と約10万票ほど減らしていること。

野党第1党・立憲民主党の求心力が働かない現状の中で、この社民党・共産党・れいわの大胆な統一政策の練り上げ、野党共闘のイニシアチブ、広範で多様な統一戦線の形成が要請されているのではないだろうか。
(生駒 敬)

 

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【投稿】安倍晋三元首相「暗殺」の背景

【投稿】安倍晋三元首相「暗殺」の背景

                           福井 杉本達也

1 安倍元首相「暗殺」される

7月8日午前11時32分、奈良市西大寺・近鉄大和西大寺駅前において、参院選のため街頭演説をしていた安倍晋三元首相が背後から近づいた男に銃で撃たれ「暗殺」された。7月9日付け毎日朝刊一面トップ見出しは「安倍元首相撃たれ死亡」・社説は「安倍元首相撃たれ死去 民主主義の破壊許さない」、朝日は「安倍元首相撃たれ死亡」社説は「民主主義の破壊許さぬ」、読売も「安倍元首相撃たれ死亡」・社説は「安倍元首相銃撃 卑劣な凶行に怒り禁じ得ない…要人警護の体制不備は重大だ」、日経も「安倍元首相撃たれ死亡」・社説は「絶対に許されぬ民主主義への凶行」である。2年前まで日本国のトップの人物を狙った犯行である。周到な計画の下に実行されたと思われる。「政治的動機」がないはずはない。しかし、1面トップで「暗殺」あるいは「テロ」などの見出しを掲げると、実行者の政治的動機や背景を書かざるを得なくなる。各紙はそろって意識的に「政治的動機」の追及を避けるため全く同じ見出しを掲げたものと思われる。

2 明らかに手抜きの要人警護―批判をかわすため死亡発表を意図的に遅らせる

読売新聞奈良支局の平野和彦記者、社会部の建石剛記者の記事では、「目撃者の話やSNSに投稿された映像によると、…安倍氏の後ろの車道を挟んで十数メートル離れた場所で、しばらく演説を聞いていた。その後、歩いて車道を渡り、ゆっくり安倍氏の背後に近づくと、警察官に制止されることなく発砲していた。」「警察幹部は『容疑者が車道に出た時点で、警察官が声をかけなければならなかった。完全に警察の落ち度だと認めざるを得ない』と話す。」と書いている(2022.7.9)。また、スポーツニッポンは元警視庁刑事の吉川祐二氏のインタビューで「安倍氏の背中側にも警備はいたが、銃撃を許した。吉川氏は『容疑者が安倍氏に迫った際、背中側には警察官らしき人が2人いた。1人は不審者に気がついたのか、もう1人に耳打ちした。本来はこの時に不審者に詰め寄るべきだった。銃撃以前に、至近距離の背後に入られた時点で警護は失敗だ』と語った。」とし、もう1人のインタビュー者の「日本ボディーガード協会の阿久津良樹会長は『映像を見ると、SPが1発目で反応できておらず、2発目も撃たせてしまった。犯人は3メートルという距離にいたのに、状況を認識できていなかったのでは』と指摘。『守るべき範囲に入ってきた人物には気づくはずだ』と疑問を呈した」と書いている(2022.7.9)。

先に、辻元清美氏が福井市を訪れた。金沢からの流れで急遽決まったものである。辻元氏は先の衆院選で落選し、現在は全くの「ただの人」である。しかし、県警は私服警官を20人動員し会場周辺を10メートル間隔で警備し、その他、交通関係の警察官も動員した。むろん、事務所に侵入されたという事件もあったからだし、当日は右翼の街宣車も来ていたということもあるが、これが通常の警備体制である。それに比較すると、安倍元首相の警備体制は元首相・与党最大派閥の首領というにはあまりにもお粗末である。

もう1点、死亡時刻の偽造がある。救急車が現場到着した11時40分頃には「心肺停止」状態にあった。しかし、消防には医師はいないので、死亡診断は医師しか出せない。奈良県立医大病院に運ばれた時点で死亡が確定する。13時には「死亡」を確定していてもおかしくはない。しかし、それを4時間も引き延ばした。この4時間の間に、マスコミへの世論工作と閣僚の口裏合わせ、警備体制に批判が向かわないような時間操作を行ったのである。

3 「暗殺」の政治的背景を語らないと決めた政府・マスコミ

元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、7月8日のIWJの岩上氏のインタビューにおいて、安倍氏の銃撃事件に関する報道はおかしいと指摘している。岩上:事件からわずか5時間後:「まず、NHKが報じたものです。『容疑者は「安倍元総理大臣に対して不満があり、殺そうと思って狙った」という趣旨の供述をしている一方で、「元総理の政治信条への恨みではない」とも供述しているということです』。そもそも、家宅捜査が始まったばかりの段階で、孫崎:「この資料(FNNの記事)に書いてあるのは、『奈良県警は認否をまだ明らかにしていないが、動機について「安倍元首相の政治信条に対する恨みではない」と話しているという』」。岩上:「すごいことですよね。まだ殺害行為の認否を明らかにしてないのに、まず先に犯行動機の中に『政治信条への恨みではない』と」 孫崎:事件の「認否もしてないのに、『思想は関係ない』ということを本人が言いますかね?」、孫崎:「『政治信条は関係ない』という最初の報道(NHKの記事によれば)ですが、『総理に対して不満があり、殺そうと思っていた』と、言っているわけです。(中略)その不満というのは、殺そうとするほどの不満なわけですよ。この個人と安倍さんとの関係があるかっていうと、まず個人的なものはないと見ていいでしょう。そうすると、個人的なものがなくって殺そうとするまでの不満がある。でも、それは政治信条の恨みではないと」いう。孫崎氏の言葉を借りるまでもなく。個人的関係が全くない政治家を(厳しい警備体制をかいくぐって)殺すという究極的行為を行うのに、「政治信条」がないというのは全くおかしいかぎりである。

4 警備体制の厳しい日本で白昼堂々と要人を「暗殺」できるのは外国勢力のみ

厳しい警備の網をかいくぐって、白昼堂々と元首相という要人に3メートルの距離まで近づいて、しかも銃を2発も発射して、確実に「暗殺」した。「警備体制が緩んでいた」と批判されているが、官僚組織が自らの判断で手抜きすることはない。誰かが手を抜くように指示したとしか考えられない。指示者は官邸を占領する治外法権の外国勢力以外にはない。無論これに証拠はない。

5 ロシアよりの安倍元首相の発言

5月29日付けのSputnikのよると、「日本の安倍晋三元首相はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領のNATO加盟に関する姿勢とドンバスでの紛争解決の拒否が、ロシア軍による特殊作戦が始まった原因であると表明した。安倍氏は英誌エコノミストとのインタビューで『ゼレンスキー大統領に対して自国がNATOに加盟せず、ウクライナ東部の2つの地方に自治権を与えると約束させることができた場合、軍事行動は回避できただろう』と述べた。安倍氏は、ゼレンスキー氏の立場を変えることは非常に難しいだろうが、バイデン米大統領であれば影響を与えることができただろうと述べた。」と報道している。

6 背景に米軍産複合体による「サハリン1・2」で動揺する日本を抑える目的か?

6月30日、ロシアのプーチン大統領は日本の商社も出資するロシア極東の液化天然ガス(LNG)・石油開発事業「サハリン2」の運営を、新たに設立するロシア企業に譲渡するよう命令する大統領令に署名した。日本の液化天然ガス(LNG)輸入量の約1割を占めるサハリン2を失えば、大変なエネルギー危機に陥る。さらに「サハリン1」についてもロシア政府の管轄下に置くよう、下院のエネルギー委員長が言及している。

金子勝立教大学大学院特任教授は7月7日に「【戦争犯罪者プーチンの脅迫に逃げるキシダメ政権】アベ害交の不良債権に、一方で「ロシアを経済制裁」と言いながら、サハリン、アーク2では「プーチン支援」で日本の権益という二枚舌のキシダメ政権。ついに記者会見で「コメントせず」で逃げ出した。対ロシア政策も破綻。」とツイートしている。金子教授の勝手な妄想とは裏腹に、もし、「サハリン1・2」からのエネルギーが途絶えれば日本は危機的状況に陥る。官僚組織もそれは分かっており動揺している。安倍元首相をロシアへのエネルギー確保の密使にという話も出た。安倍元首相の「暗殺」は米軍産複合体に逆らえばどうなるかという脅しの可能性もある。

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【投稿】ガス不足で今冬には日本は凍え死ぬ―「サハリン2」からの日本企業撤退要求と日本政府の対応―

【投稿】ガス不足で今冬には日本は凍え死ぬ―「サハリン2」からの日本企業撤退要求と日本政府の対応―

                            福井 杉本達也

1 「サハリン2」から日本排除も

ロシアのプーチン大統領は6月30日、日本の商社も出資するロシア極東の液化天然ガス(LNG)・石油開発事業「サハリン2」の運営を、新たに設立するロシア企業に譲渡するよう命令する大統領令に署名した。「同事業に参画する三井物産と三菱商事はロシア側の条件をのまないと株主として残れない事態に発展した。日本の液化天然ガス(LNG)輸入量の約1割を占めるサハリン2を失えば、電力の供給不安は一段と深刻になる」(日経:2022.7.2)。

政府は4月8日にロシアによるウクライナ侵攻の追加制裁を表明し、資産凍結をロシア最大手銀行のズベルパンクに広げ、ロシア産石炭の輸入を禁止、在日ロシア大使館の外交官ら8人を圏外追放した。日ロ間は戦争状態でもないものを、米国のいうがままにロシア資産を凍結するなどという行為は窃盗である。日本や反ロシア派がやっていることは、日本を滅亡させるための愚劣極まる行為である。「サハリン2」は日本に最も近いガス田であり、輸送コストも低い。天に唾する行為であり、もはや、対ロ制裁の失敗は誰の目にも明らかである。日本が敵視している中国の企業が「サハリン2」の代わりに入るかもしれないよ。ウクライナ戦争は欧州での話であり、極東の日本とは全く無関係の話である。米国の言いなりになってロシア制裁に加わればこういう結果となることは目に見えていた。ロシアは何度も日本にシグナルを出していたが、それを無視し、欧米の手先としての道を選んだ。しかし、損害を被るのは日本国民である。岸田首相は「サハリン2」ショックに対し「ロシアの対応を注視」・「関係企業と連携して対応を検討」という、全く頭が空っぽのコメントを出した。明日にもエネルギー危機で国家が綴れるかもしれないという必死さを全く感じない。7月2日のテレビ東京BIZで松尾日本経済新聞編集委員は、「サハリン2」のLNGを日本は600万トン輸入しており、仮に全面停止となれば冬場には「強制停電」もありうると心配する。日本は冬場に電気なしで凍え死ぬ。岸田氏の発言は哀れとしかいいようがない。

 

2 支離滅裂の岸田首相のNATOサミット出席

岸田首相ほど日本国の国益を積極的の損ねている人物はいない。日本はNATO加盟国ではない。NATOは加盟国が攻撃された場合、全体への攻撃とみなし「集団安全保障」を敷く。日本は極東に位置し、NATOは北大西洋である。それを何をのこのことNATOまで出かけたのか。春名幹男氏は「岸田首相の動向を見ている限り、外交・安全保障政策は支離滅裂です。今回のNATO首脳会議で『米欧VS中ロ』の対立構図は鮮明となり、世界が新たな冷戦体制に向かっていくことがハッキリした。日本が米欧側に立ち、NATOの準加盟国を志向していることも明確になった。これは戦略的転換です。経済的かつ政治的な枠組みであるEUとの関わりを深めるのならまだしも、核共有制度をとり、核戦力を基礎とする軍事同盟のNATOへの接近は、国是として堅持してきた非核三原則に反する。岸田外交は矛盾だらけ。抑止力どころか、周辺国を刺激して緊張を高めるだけです」(ゲンダイ:2022.6.30)と手厳しく批判した。中国も「東アジアの未来を語る前 東アジアの昨日に何が起こったか反省してほしい」=中国外交部報道官が日本側のNATOサミット発言を批判。外交部の趙立堅報道官は1日、日本の岸田文雄首相によるNATOサミットでの発言を批判した(CRI:2022.7.1)。

今度のNATO会議にまんまと乗せられた岸田首相。「サハリン2」の接収は元々容易に予想出来た。「サハリン2」とNATOとどっちが大事なのか?アメリカの言う事に追従し、自国の利害を深読みできず、あまりにもお粗末な外交無知である。

 

3 米国の操り人形として無節操に動く岸田首相

米国の言いなりで国益を全く無視して無節操に動く岸田首相は、国民にとってあまりにも危険な首相だ。「ジャン・アダムズ駐日豪州大使は、「米国やG7の対ロシア制裁に完全に同調した日本のスピード感は、エマニュエル大使がお膳立てした効果的なコミュニケーションがあった」と指摘」した(ブルームバーグ)。官邸は完全に外国勢力に乗っ取られてる。米国の言いなりに対ロ制裁を繰り返し、挙句にNATOサミットにまで顔を出し、その先の結果も考えない。物価高に円安、さらにエネルギー危機・電力危機、農業用肥料高騰となれば、いいかげん国民は目を覚まさなければならない。

かつて、米国から締め付けられて、イランのアーザーデガーン油田の開発利権を手放した。代わりに参加したのは中国石油天然気集団(CNPC)である。対米追随で日本が大損した。今やイランも上海協力機構(SCO)加盟国である。開発利権に空席が出れば誰でも参入する。中国や韓国・インドなどは手ぐすねを引いて待っている。

 

4 日ロ漁業協定・知床観光船遭難行方不明者捜索でも後手後手

ロシア外務省が北方領土周辺水域での日本漁船の「安全操業」を担保する漁業協定の履行を停止すると発表した。日ロ漁業協定は1998年に締結されたもので、日本側が資源保護への協力としてロシア側に資金を支払い、日本漁船がクリル諸島で操業するものであるが、今回「日本側が、協定に基づく支払いを『凍結』した」としていた。その後、2022年は昨年より200万円少ない8800万円を日本側が支払い、解禁された。これに対し、日経新聞の6月9日付け社説は「ウクライナ侵攻に伴う制裁の責任はすべてロシア側にある。漁業交渉に結びつけるのは、両国の信頼関係を大きく損なう決定で遺憾だ。」「今後、新たな報復措置を打ち出す可能性がある。政府はそれらに備えるとともに、屈することなく、自らの立場を貫いてほしい。」と書いた。「立場を貫い」たらどうなるのか。全面衝突以外にない。全くの米国の広報紙である。

知床半島沖の観光船沈没事故後、北方領土・国後島で見つかった男女2人の遺体と、事故で行方不明となった2人のDNA型が一致したとの連絡が、ロシア側からあった。遺体の早期引き渡しに向けて調整を進めていく(福井:2022.6.25)としているが、事故から2か月、早くから遺体があるとの連絡を受けたにもかかわらず、まだ遺体の引き取りもできない・引き取りのやる気もないというのは遺族にとってあまりにも非情であり、後手後手の対応である。

 

5 ドイツや、当の米国の方が制裁を回避して賢く動いている―無能の岸田も頭を少しは使え!―

Sputnik 6月14日付けによると、米国財務省は、制裁対象のロシアの銀行とのエネルギー関連取引を12月まで許可する一般ライセンスを発行した。同省によると、、Vnesheconombank、Otkritie、Sovcombank、Sberbank、VTB、Alfa-Bank、およびロシア中央銀行との取引が許可される。ライセンスの目的は「エネルギーに関連する」もので、原油、リース凝縮液、未完成の石油、天然ガス液体、石油製品、天然ガス、またはエネルギーを生産できるその他の製品が含まれる。これは、原子力、熱、再生可能エネルギー源を含むあらゆる手段によるバイオ燃料、またはウラン、ならびにあらゆる形態のウランの製造、ならびに開発、生産、生成、送電、または電力の交換に使用される石炭、木材、または農産物も含まれるという広範囲なものである。米国は自らが制裁を課しながら、自らは制裁を必死に回避しようとして動いている。また、ブルームバーグによると、バイデン政権は農業会社や海運会社にロシアの肥料をもっと購入して運ぶよう静かに促している(Zerohegee 2022.6.14)。

また、ドイツなどEU諸国は、エネルギー危機のリスクが高まる中、ガスの支払いをルーブルで行うというロシアの要求に同意したとワシントンポストが報道した。ワシントンポストは、この同意をロシア側の「勝利」と呼んでいる。ロシアのアレクサンドル・ノヴァク副首相は、ロシア国営ガス企業ガスプロムの輸出子会社「ガスプロム・エクスポルト」の顧客である54社の約半数がルーブル口座を開設したと述べている(Sputnik 2022.5.26)。

欧米諸国は自ら課した制裁から自らだけが逃れるため、あらゆる方法を駆使している。それと引き換え、日本は全く何も考えず、米国の言うがままにロシアに対する非友好国として振舞っている。いくらバカとはいえ、少しは自らの頭で考えなければ、国民生活はどん底に突き落とされる。

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【投稿】電力危機を原発再稼働の理由にするも、福島第一「廃炉」の腰は定まらず

【投稿】電力危機を原発再稼働の理由にするも、福島第一「廃炉」の腰は定まらず

                              福井 杉本達也

1 またまた、「電力需給逼迫注意報」の発令

今年は東北地方以外は6月中の梅雨明けで、異常な暑さとなっている。経産省は6月27日、東京電力管内に電力の需給逼迫注意報を出した。注意報は電力の需要に対する供給力の余力を示す「予備率」が5%を切る見通しになると出すという。東北電力・北海道電力管内も供給余力は厳しい。さらに、関西電力も、計画停止中の大飯原子力発電所4号機(出力118万キロワット)の定期検査中に、蒸気発生器に水を送るポンプの二次系配管からの水漏れを確認し、発電の開始が7月下旬と予定より3週間程度遅れると発表した。運転再開の遅れにより、北陸、関西、中園、四国、九州の5電力管内の7月の予備率は3・8%から3%に下がる見込みとなった。関電によると原子炉起動・停止時に使用する電動主給水ポンプの配管に直径1ミリの穴が空いたというもので、1993年の営業運転開始以降、この配管は一度も交換していないという。実に恐ろしい状態で再稼働していたものである。関西電力には福島第一原発事故の教訓は何一つ生かされてはいない。

 

2 「電力自由化」という経産省の愚策が招いた3月の「電力危機」

経産省は、今年3月21日の夜、東電管内について「電力需給逼迫警報」を出している。気象庁は22日の東海、関東地方は真冬並みと発表していた。3月16日に、最大震度6強、マグニチュード7.4の福島県沖の地震が発生し、火力発電所が10箇所以上が停止し、3月18日には東電は節電を呼びかけた。その後多く火力発電所は復旧できず、新地火力(相馬共同火力発電の石炭火力100万kWが2基)、広野火力6号機(東電の石炭火力60万kW)などは損傷が大きく、その後も止まったままだった(参照:2022年6月「月刊たんぽぽ舎ニュース」山崎隆久)。

萩生田経産相は、電力供給力の低下の原因として、「火力発電の休廃止があいついでいる」ことをあげた。経産省の調べでも、2016年の電力小売全面自由化後、電力大手が持つ火力発電所が石油火力を中心に急激に減少している。具体的に見ると、東京電力と中部電力の火力発電部門を統合して発足したJERA(ジェラ)は、2020年までに茨城県神栖市の鹿島発電所5、6号機、福島県広野町の広野発電所2号機など東京電力管内13基、愛知県田原市の渥美発電所4号機など中部電力管内2基の石油火力をすべて休止ししている。2021年度はLNG火力の千葉県市原市の姉崎発電所5、6号機を廃止。三重県四日市市の四日市発電所4号機など計3基を休止した。関西電力も老朽化した火力発電所を廃止している。石油火力で2019年に和歌山県海南市の海南発電所1~4号機、2020年に大阪府岬町の多奈川第二発電所1、2号機、LNG火力では2021年2~3月に兵庫県姫路市の姫路第二発電所の既設5、6号機を廃止した。海南と多奈川第二は発電所自体を廃止している。石油火力でも和歌山県御坊発電所2号機を2019年に休止した。2021年までの5年間で休廃止された石油火力は原発10基分に相当する出力約1000万キロワットにのぼる。(長周新聞:2022.4.1)。経産省が主導した世紀の愚策ともいうべき電力の自由化政策で、採算性の悪い古い火力発電所が大量に廃止されてきたことが「電力危機」を招いている。

 

3 「電力危機」から原発再稼働を目論む政府・電力会社

資源エネルギー庁長官は、4月中旬の自民党本部の会合で「電気が足りないないなんてあってはならない。ロシアにつけこまれ燃料を接収されるかもしれない。原発を動かせ」と出席議員から叱責されたという(日経:2022.6.6)。日経は「主力電源の一つの原発は、原子刀現制委員会の安全審査を通過したもの17基ある。動いているのは4基のみで、残る13基の発電能力は計1300万キロワット、危機下でも電力は十分賄える。」と書く(日経:同上)。既に5月27日の衆院予算委員会で、岸田文雄首相は原発を巡り「エネルギーの価格安定、安定供給、温暖化対策を踏まえた場合、安全性を大前提に原子力を最大限活用していくことは大事だ」と述べ、再稼働を急ぐ方針を明らかにしている(福井:2022.5.28)。こうしたことを受け、日経の6月6日の社説は「原発には稼働中、二酸化炭素(CO2)をほとんど出さない」とまず嘘を並べ、次に「ウクライナ危機はエネルギー安全保障の重要性を再認識させた。」と、エネルギー安全保障を持ち出し、「原発がなぜ必要なのか。そのために国民の理解をどう得るのか。原発をやめるなら代替手段をどう確保するのか」と国民を脅す。

しかし、首相の口先の原発再稼働推進宣言のわりには、動きは鈍い。問題の第一は福島第一原発の”廃炉工程”である。40年で廃炉にするというが、全く先は見えない。常識的には”廃炉”などできっこないのであるが、“やっているふり”のために、無理やり「工程」をつくっているだけである。東京電力は5月23日、福島第一原発1号機原子炉格納容器底部を水中ロボットで撮影した画像を新たに公開したが、映像を見た資源エネルギー庁の木野参事官は「『それにしても激しい損傷で、ちょっとびっくりですね。これだけやられているとは思っていなかった』驚いたというのが、原子炉圧力容器の下で確認された、設備の激しい損傷です。木野参事官『下が空洞になっている。デブリの熱でコンクリートが溶かされたか、蒸発したことが考えられる』撮影されたのは、原子炉圧力容器の真下にあるコンクリート製の『ペデスタル』付近。圧力容器を支える土台に当たる部分です。本来、コンクリートで覆われているはずのこの場所が、映像からは空洞が確認でき、鉄筋が露出してしまっています。デブリの熱は2800℃ほどとされていて、コンクリートを溶かしてしまったとみられます。」(日テレ:2022.5.29)と報道されている。近づくだけで数秒で即死するような放射性デブリの回収などできっこない。政府はいつまで“廃炉ごっこ”をするつもりなのか。

日経新聞6月30日付けによると、西の中部電力・関西電力などの60ヘルツ帯の電力を東電などの50ヘルツ帯の東に送電できる電力融通は、大震災時点では100万キロワット、現在でもわずか210万キロワットしかなく、計画の300万キロワットににするには2027年度までかかる。同じ50ヘルツ帯の東電と東北電力管内でも電力融通は現在500万キロワットであり、1028万キロワットになるのは同じく27年度中である。大震災で電力網がズタズタになり、電力融通の重大さが認識されたと思われたが、11年たってもこのありさまで、首相を始め「原発再稼働」のみしか口にできない、しかも電力価格高騰には節電ポイントというズレまくった政策しか出せないようでは、いかに、政府・経産省が無責任・無用な存在であるかを今回の「電力危機」は明らかにしている。

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【投稿】ドル支配瓦解への胎動--経済危機論(86)

<<G7:ロシア産・金の輸入禁止を宣言>>
6/26、米、英、独、仏、伊、日本、欧州連合のG7首脳は、ドイツのバイエルンで開かれたサミットに集まり、失敗と失態を続け、むしろ逆効果を招いている対ロシア制裁政策のさらなる強化に乗り出した。
一つは、ロシア産ガス・石油の輸入禁止に加えて、上限価格を設定して輸入禁止を一層徹底させたい狙いで、一定価格以上で売却されたロシア産石油の輸送禁止を検討することで合意したとされている。しかしこの動きがさらなる「供給不足」で一層の値上げを招くことが懸念され、意見の不一致を露呈、具体的な合意に至らず、であった。6/28、米政府当局者はこの上限価格設定案について、インドやアフリカ、中南米諸国などとも近く協議を開始することを明らかにした。
サミットでは代案として、ロシア産石油輸入の保険適用禁止が提起されたが、すでにEU諸国は海上船舶の保険の禁止を実行しており、価格上限を設定すること自体が、制裁措置の一部を解除する必要があることから、自己矛盾に陥る事態を招いているのである。まるで行き当たりばったりそのものと言えよう。
さらにこのロシア産石油の輸入禁止措置については、欧州連合としては今年末までにほぼ全面禁止することに合意した、としている。しかし、EU諸国の中でも、ハンガリーはロシアからの石油の86%、チェコは97%、スロバキアはほぼ100%をパイプラインを通して確保している。賛同など得られるものではないし、実行不可能なのである。
その上に、この制裁政策で致命的欠陥があるのが、石油よりも代替品を見つけるのがより一層困難、かつ依存度がさらに高いロシア産の天然ガスを禁止するかどうかという問題である。これはG7においてもEUにおいても不問に付されていること、問題提起さえできていないことである。ドイツの政界・産業界のリーダーたちは、ガス禁輸はドイツ経済に壊滅的な打撃を与えると警告している。もしG7が戦略的・核心的な制裁効果を期待したいのであれば、不問にはできないはずであるが、不問にせざるを得ないのである。
そもそもこうした制裁措置自体が、米バイデン政権の対ロシア・対中国の冷戦政策・緊張激化政策と一体のものとして提起され、現実を無視したことによって、これまでにないエネルギー価格の高騰、世界的なインフレの高進というブーメランとして自らに跳ね返ってきているのである。

そこでさらに新たに登場したのが、ロシア産・金の輸入禁止宣言である。世界で最も古い貨幣、実物資産として裏付けを持つ金を国際市場で自由に交換できな

G7 ロシア産の金輸入禁止を発表

くさせようというわけである。
バイデン政権は、エネルギーに次ぐ輸出品であるロシアの金を禁止すれば、ロシアは年間190億ドルの収入を得ることができなくなる、と主張している。バイデン氏とブリンケン米国務長官は演説やツイートで、その収入の流れを断つことが「重要」だと繰り返している。

<<脱ドル化の加速>>
6/27、このニュースで、金地金は0.8%上昇したが、その後最大の取引市場であるロンドン市場では、0.2%増の1オンス=1830.05ドルに下げている。この制裁措置が長期的な影響を与えることはほとんどないと判断されたわけである。
そもそも金地金の最大の需要国である中国とインドは、G7に加盟していないしし、縛られる必要もない。G7諸国は世界の金消費量の5分の1にも満たないのに対し、消費量の約半分は中国とインドによるものである。「したがって、彼らの需要は、ロシアの金属で満たされ続ける可能性があり、即時の不足は考えにくい」のである(ブルームバーグニュース 6/27)。制裁効果ゼロの制裁なのである。いやむしろ、バイデン氏やG7の決定は、金市場までもが、石油制裁と同様、ロシアの友人にとっては安く、ロシアの敵にとっては高くなる、逆効果をもたらすことが歴然としているのである。

中国、ロシアの金保有量は80%以上増加しているが、ドル債保有量は20%減少している。

問題は、このロシア産・金の輸入禁止制裁がはしなくもドル一極支配体制崩壊への胎動を世界的に明らかにしたことにあると言えよう。
金地金の最大の買い手はG7諸国ではない。投機的金融資本主義に席巻されてきたG7諸国は、名目貨幣資産の裏付けとしての金地金の価値を軽視し、金を売却し、意図的に金地金の裏付けを減少させてきたのであった。いや、現実には金地金を再購入する資金的余裕さえなくなってきたのであった。そんな資金があれば、マネーゲームや投機でひと稼ぎした方が価値があると見なされ、実体経済とかけ離れたバブルに酔いしれてきたのである。
一方、中国とロシアだけをとっても、両国の金保有量は80%以上増加しているが、ドル債の保有量はここ数年で20%も減少しているのである。ロシアは過去10年間、金のトップバイヤーとして、その金準備を2011年末の883トンから2021年末には2302トンにまで押し上げている。いくら金の輸入禁止を唱えたところで、名目資産であるドルとは違って、金は実物資産であり、金の直接取引・直接供給も可能なのである。
なおかつ、金地金を購入しているのは、主としてインドやトルコなどの発展途上諸国の中央銀行であり、中国である。これら諸国は、ドル資産の蓄積から、金地金という実物資産に資本を配分する、つまりは脱ドル化することの重要性に明確に舵を切り替えだしたのである。裏付け資産としての金の軽視がドル債権の価値・準備資産としてのドルの価値を一貫して低下させてきたところへ、さらなるロシア制裁として、ロシア産・金の輸入禁止を打ち出したことは、逆にドル資産保有の危険性、インフレ高進によるさらなるドル価値の減少の進行をあぶりだし、G7以外の世界各国の脱ドル化を加速させる必然性を明らかにしたのである。

経常収支の黒字・赤字。ロシアと米国の比較、1999-2022年

バイデン政権やG7の一連の対ロシア制裁措置は、ことごとくブーメランとして自らに跳ね返ってきている。逆にロシアのルーブルは、対ユーロで7年ぶりの高値にまで上昇し、ロシアの経常収支は記録的な黒字となり、対してアメリカは記録的な赤字に陥っている。短期的に見ても、長期的に見ても、制裁が、ドル一極支配体制瓦解への道を掃き清めだしたのだと言えよう。
(生駒 敬)

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【投稿】金融危機が迫る中、従属国の日本には「ドル売り」=「円安」修正は不可能

【投稿】金融危機が迫る中、従属国の日本には「ドル売り」=「円安」修正は不可能

                                                               福井 杉本達也

1 「物価の高騰はロシアのせい」か―米欧の経済制裁こそ要因

「岸田文雄首相は15日の記者会見で、物価高に関し、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえ『まさにロシアによる価格高騰、【有事の価格高騰】だ』と訴えた」(産経:2022.6.15)。しかし、米国とその西側同盟国によって課された禁輸措置は、当初意図したように、ロシアを封じ込め、経済を窒息させるのではなく、逆に制裁者自身の経済を押しつぶしつつある。ロシアへの経済制裁は、実際は、石油や穀物のようなロシアの輸出品の価格を上昇させ、ロシアを貧困化させるどころか、豊かにし、逆にEUはガス不足に苦しみ、アジア・アフリカ諸国はは高騰した小麦やヒマワリ油などの食料や肥料の手当に苦しんでいる。

日本の物価高騰の原因は、資源高と円安であり、これに対応しない限り、物価高騰を防ぐことはできない。資源高にプラスして円安により、電気料金や食料品価格を中心に、値上げラッシュが始まっている。原油価格などの資源価格の高騰は、世界的な問題であり、日本一国の努力ではどうしようもない。だが、円安については、コントロールが可能である。岸田政権は物価対策を講じるとしてガソリンに対する補助金などを講じている。しかし、円安を放置したまま個別の物価に対策を講じても、巨大な財政赤字が膨らむ一方で、効果はない。日本は、これまで長期にわたり円安政策をとってきた。しかし、自国通貨どんどん安くなること、自国の経済的地位が低くなることが国益であるはずはない。

 

2 円安の原因はアベノミクス=黒田日銀による異次元緩和にある

6月13日の外国為替市場で円相場が一時、135 円台前半まで下落し、金融危機の1998年以来、約24年ぶりの円安・ドル高水準に逆戻りした。円安を招く構図は当時と様変わりし、国内産業の空洞化により、産業競争力が失われている点だと日経新聞は指摘する(日経:2022.6.14)。6月12日の日経によると、物価や経済状況からみた円とドルの相対評価である理論値では1ドル110円前後と試算され、実勢レートは理論値(購買力平価)に比べ大幅に円安に傾いている。米金利の上昇観測が一段と強まったことにより、日米金利差の拡大を手掛かりにした円売り圧力がかかっている。資金は低い金利の国から高い金利の国に流れる。日米の金利差:2年金利の差は10日に3・1%台と2018年11月以来の水準まで広がっている。

この日米金利差は何も市場で自然に生まれたものではない。アベノミクスによる2013年以降の日銀の異次元緩和の国債購入による円安圧力にある。米国が金融引締め政策を推進するなかで黒田日銀は頑固に金融緩和政策を維持している。長期金利は本来、金融市場が決定するものだが、この長期金利を日本銀行が人為的に定めようとしている。日銀が長期国債を買い支えて量的緩和を維持する「人為的低金利政策」である。黒田日銀総裁は4月28日の会見で、長期金利(10 年債の利回り)は、0.25%を上限とし、0.25%に下がるまで、無限に指し値買い(日銀が国債を買うこと)を行う」としている。米FRBが金利を上げる中、日銀は正反対に、無制限に円を供給して円安を誘導するのであるから、ヘッジファンドに「円売りでの投機をしろ」と誘導しているようなものである。日銀の金融緩和策で、円は、世界一下落が大きい通貨となり、この27 年で1/2 に下がってしまった。これは他国に対して、日本人の世帯所得が1/2 になったことを示している。OECD(経済協力開発機構)の平均賃金比較によれば、1997年を100として、2020年の平均賃金は、米国:206、英国190、カナダ184、独159、仏158、伊140だが日本は93に下落している。

日銀はなぜ、この期に及んでも、米欧の中央銀行とは正反対の金融緩和策を取り続けるのか。それは、日米の金利差を確保することによって、安定的に日本の資金を米国に流入させるためにである。また、米国は日本の安い商品を購入することで、インフレによる物価の高騰を少なからず抑えることができる。これは宗主国の従属国に対する命令である。日本政府・日銀という宗主国の代官は、国民に貧しい生活をさせても、宗主国の経済的利益を守るために励んでいる。いくら円安になろうと、日銀は勝手に量的緩和を止めることはできないのである。

 

3 日本はドルを売って円高にすることは可能か

円高に誘導するため、日本は手持ちのドルを売って円を買うことはできるのか。かつて、ミスター円といわれた榊原英資元財務官は「介入には米国の支持が要る。私が現役のころは『介入するぞ、支持してくれ』と伝えて、少なくとも『反対しない』という了解を取った。今の米国は同意しない。ということは介入できない、日本の単独介入でも米国の同意は必要だ。」(日経:2022.6.17)と答えている。日本は1兆3千億ドルの外貨準備を保有しており、その多くが米国債であるが、それを使うことはできないということである。具体的には外国為替資金特別会計の米国債を金融市場で売却して、一旦ドルを調達し、そのドルを外国為替市場に売却して円を買うということであるが、米国債を売るということは、米国債が値下がりし、金利が高騰することとなる。財政赤字に苦しむ米国の国家財政をさらに追い詰め、ドルの信認を低下させ、暴落させることとなる。もちろん、日本が米国債を売却するならば、最大の3,1兆ドルという外貨準備を持つ中国は当然それに追随することとなろう。逆に、為替介入ができないということであれば、米国債は日本にとっては正当な債権ではなく、塩漬けされた“債権”は、単なる紙切れとなる。日本の商品を米国に輸出して外貨を稼いでも、その額面は0に等しいということであり、タダ働きで米国に商品を輸出したことになってしまう。米国は日本に働かせて、その血と汗で稼いできた金で昼寝ができることになる。全くの不等価交換である。これでは益々日本の国富が米国に搾取されることになる。

 

4 金融危機が迫り、世界からドルをかき集める米国

米国企業のバランスシートが傷み始めている。6月14日付の日経新聞は「米国企業による財務安定のための海外からの資金還流がドル高を招き、ドル高が収益を圧迫して信用リスクを高め、さらなる資金還流を招く悪循環」が起こっているとする。FRBの金融引き締めで景気後退懸念が強まり、財務体力の低い企業の債務不履行(デフォルト)リスクが意識され、投資マネーが流出している。2008 年のリーンマン・ショック後、ゼロ金利と量的緩和により、実体経済からかけ離れた金融バブルを生みだしてきたが、これは過剰な期待による非合理なものであり、インフレで金利が上がっていけば、崩壊することは目に見えている。米国は経済恐慌を乗り切るために世界中からドル資金をかき集めるのに死に物狂いである。そのための「強いドル」政策であり、FRBによる金利の引き上げである。

橋本龍太郎元首相は1997年6月23日のコロンビア大学での講演において聴衆から「日本がアメリカ国債を蓄積し続けることが長期的な利益」かとの質問が出た際、橋本は「大量のアメリカ国債を売却しようとする誘惑にかられたことは、幾度かあります。」と発言しただけで首相の首が簡単に飛んだ(Wikipedia)。ここで、万が一にも従属国である日本が「ドルを売る」と叫んだとたん、最も従順な従属国日本がついにドルを見限ったとして、中国やインドなども追随するであろう。ドル覇権体制があっという間に崩壊することは目に見えている。米国はドルという紙切れ以外に債務を払うすべがないからである。米国は何としても従属国の政策を覆させるべく日本に軍事介入する。横田・横須賀基地の米軍の戦車や攻撃ヘリが永田町に向かう。岸田首相は石油代金のユーロ支払いを構想したイラクのフセイン大統領やアフリカ域内の金にリンクする通貨制度を構想したリビアのカダフィ大佐のように処刑されるであろう。これは全くの“架空の物語”であるが、従属国日本の代官が宗主国の意向に逆らうことはあり得ない。しかし、事実を正しく認識することは、事態を変えるための第 1 歩である。

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